自治体の「ESG債」活況 福岡市初の環境債に発行額の16倍の応募

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松沢拓樹
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 環境や社会問題を解決する事業に限って資金を募る「ESG債」を発行する動きが、自治体で広がっている。財源調達に加えて環境重視などの理念を市民に訴えたい行政側と、社会課題への配慮をアピールしたい投資側の双方に高いニーズがあり、発行額を大幅に上回る応募が相次ぐ。一方、対象の事業が実際に課題解決につながったかを検証する仕組みが不十分との指摘もある。

 ESG債とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance=企業統治)を重視し、気候変動や地球環境の持続可能性への対応に資金の使途を限定した債券で、昨今のSDGsの流れに伴って、企業などにより世界中で発行が急増している。

 福岡市は1月、ESG債の一つで、環境問題の解決に限った「グリーンボンド(環境債)」を初めて発行した。太陽光発電の導入など省エネルギーに配慮した庁舎の整備事業や、自家用車やバスの利用抑制で「クリーンな輸送」を実現する地下鉄事業に充てる。

 発行額50億円で起債すると、主に国内の金融機関など機関投資家から計798億円の応募があり、発行額の約16倍の需要があった。「想定以上だった」と市の担当者は驚く。

 自治体のESG債は、東京都が2017年度に発行したのが初めて。その後、長野県神奈川県なども導入し、全国に広がっている。21年度は川崎市がグリーンボンドを、北九州市が環境と社会問題解決の特徴も併せ持つサステイナビリティーボンドを発行した。いずれも発行額の10倍を超える申し込みがあった。21年度だけで、国内の自治体発行のESG債は1千億円を超える。三重県も今月、グリーンボンドを発行する予定という。

 自治体が発行するESG債は、通常の地方債と比べて利率は変わらない。福岡市のグリーンボンドは償還期限10年で利率は年利0・214%。それでも人気の背景には、自治体や投資家側の思惑がある。

 福岡市は、グリーンボンド発行の狙いについて「より広い層に投資してもらうことで、財源の安定調達につながる」と説明する。脱炭素などの取り組みを進め、市民に啓発することも自治体の責務の一つという。担当者は「持続可能な社会を目指すことが世界的なスタンダード。SDGsに配慮した債券でないと、将来的には投資の優先度が下がる可能性がある」と語る。

 投資側も、社会問題に特化した分野への投資が、企業価値を高める機会の一つになると見込む。福岡市のグリーンボンドに投資した福岡銀行総合企画部の担当者は「地域の金融機関として、地域の脱炭素の取り組みを支援したい。投資額や利率だけの問題ではない」。債券発行の理念に共感するとともに、自治体発行の地方債は信用度が高い点にも着目する。

 福岡市や東京都のESG債について、外部評価を担当した「格付投資情報センター」(東京都)の大石竜志・ESG推進室次長は、「投資家も投資責任が問われる時代。ESG債に投資することで、社会問題に気を配って投資をしていると示す必要がある」と指摘する。

 ESG債の発行拡大は世界的…

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