長生炭鉱事故から80年 宇部で犠牲者悼む

太田原奈都乃
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 山口県宇部市沖の海底にあった旧長生(ちょうせい)炭鉱で、1942年に起きた水没事故の犠牲者をしのぶ追悼式が12日、開かれた。犠牲になった作業員183人のうち7割強が朝鮮半島の出身だった。事故から80年の今年、コロナ禍のため韓国からの遺族の参列はかなわなかったが、支援者や地元住民ら150人が参列。炭鉱の遺構近くにある追悼碑の前で犠牲者全員の名前を読み上げ、黙禱(もくとう)を捧げた。

 事故は戦争中の2月3日に起きた。追悼式を毎年開く市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」によると、犠牲者のうち136人が朝鮮半島から強制連行されたり、生活のためやむなく日本に渡ったりした人たちで、10~20代の若者も多くいたという。

 遺骨は引き揚げられていない。追悼式では駐広島韓国総領事館の林始興(イムシフン)総領事が「80年も冷たい海の底に眠っている犠牲者に思いをはせるともどかしい」、刻む会の井上洋子共同代表(71)は「遺骨の収集と返還に取り組む」と語った。

 遺族や支援者が高齢化し、次世代への継承が課題となる中、刻む会などは今回、若者の追悼メッセージを募った。国内外から36の声が寄せられ、式でその一部を読み上げた宇部市の高校2年生藤田優さん(17)は「こんな歴史があると初めて知った時、驚いた。学校で勉強する機会があったほうがいい」と話した。犠牲者の名前、年齢、出身地をしるした183本のロウソクも海岸に並べられた。

 刻む会はこの日午後、遺骨収集団体の関係者らを招き、シンポジウムを開催。今後はボーリング調査などで坑口の発掘をめざすという。(太田原奈都乃)

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