なぜスピードスケート選手はフィニッシュ後すぐ脱ぐのか スーツの謎
スピードスケート スーツのトリビア
スピードスケートではフィニッシュラインを過ぎた後、タイムを見てすぐ、頭部のフードを外す選手が多い。そのまま、レーシングスーツの上部を脱ぎ出す選手もいる。これらは、スーツがもたらした動作とも言える。
スーツには、直立しようとすると、突っ張るような設計がされている。スタート時の低い前傾姿勢を保ち、推進力を生み出すためだ。特に体幹部や太ももには、伸びにくい素材が使われており、レース後に胸元のチャックを下げる選手が多いのはこのためだ。
清水宏保が男子500メートルで金メダルに輝いた1998年長野五輪のころまでは主に、動きやすさと空気抵抗の軽減が求められた。
大きな変化があったのは、2002年ソルトレークシティー五輪のころ。大手スポーツメーカーのナイキが伸縮性の違う素材を組み合わせ、滑走時の姿勢保持を助けるスーツを開発し、着用した米国やオランダの選手が好成績を収めた。日本代表のスーツを作るミズノも、06年トリノ五輪から姿勢保持の機能を取り入れている。
安全面の配慮から、素材が異なるスーツもある。
大勢の選手が一斉にスタートするマススタートや団体追い抜きでは、首やわきの下、ひざ裏などの動脈が通っているところに切れにくい素材が使われる。スケート靴のブレード(刃)はナイフのように鋭いため、転倒して接触した場合の備えだ。ショートトラックのスーツにも同様の機能が備わる。(菅沼遼)
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