妊娠ストール知っていますか? 食卓から見えない動物の苦痛

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太田匡彦 聞き手・太田匡彦
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 日本のアニマルウェルフェア(動物福祉)のあり方について考えようと、読者の皆さんに「動物の幸せを考えることがありますか?」と尋ねた昨年末のアンケートにはたくさんの回答が寄せられました。回答から、ペットや実験動物、展示動物に関心が高いことがわかりました。一方で頭数が圧倒的に多いのは畜産動物。認定NPO法人「アニマルライツセンター」代表理事の岡田千尋さんに取材し、動物福祉の向上に向けてなにが課題なのか改めて考えてみました。太田匡彦

世界的な潮流から取り残される日本

 アンケート結果で、食品や衣料品として利用される動物への関心が相対的に低いことに、少しショックを受けました。実験やサーカスと比べても、動物の存在を想像しにくいのが原因かもしれません。でも、利用されている動物の数が圧倒的に多いのがこの分野。日本のアニマルウェルフェア(動物福祉)を底上げしていくには、畜産動物の現状についてもっと周知していかなければならないと感じます。

 「ビーガン」(衣食などに関してあらゆる動物製品を避ける人)に象徴される、できる限り動物に苦しみを与えない考え方への理解は、確実に広まってきています。大手食品会社が大豆ミートなど代替肉の商品開発に乗り出したり、世界的なファッションブランドがファーフリー(毛皮使用の禁止)を表明したり。少なくない企業や消費者が、新たに登場したプラスの価値観として受け止めるようになりました。

 問題は、マイナスの存在を改善、淘汰(とうた)していこうという方向に、視線が向きにくいことです。「いいもの」を取り入れると同時に「わるいもの」を排除していかないと、日本は、動物福祉の世界的な潮流から取り残されます。企業にとっては、動物福祉への配慮はCSRや社会貢献の話ではなく、本業そのものの「リスク」を取りのぞけるかどうかという問題になりつつあります。動物福祉に配慮を欠いた原材料を調達しているような企業は将来的に、機関投資家などから選ばれなくなるでしょう。

 動物福祉の向上に向けて私たち「アニマルライツセンター」(1987年創設・2017年認定NPO法人)が力を入れて取り組んでいるのが、養鶏場の「バタリーケージ」と養豚場の「妊娠ストール」の問題です。動物の苦痛を顧みず、効率ばかりを重視したこの二つの飼育方法は、世界的に動物を苦しめる象徴となっていて、既に欧州連合(EU)などでは利用が原則禁じられたり、期間を限定して利用するよう規制されたりしています。

 日本でも、何段にも積み重ね…

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