首相通訳の英語術とは 「歴史の目撃者」、酒のうんちくもとっさに

有料記事

聞き手・佐藤達弥
[PR]

 アラフォーになっても英語が上達しない私は、新しい学習アプリを見つけては飛びついたり、いろいろな参考書を買ってみたり、試行錯誤をしています。英語を日常的に使う外交官は、どんなふうに英語を身につけたのでしょうか。元駐英大使の鶴岡公二さん(69)は「同じ教材を繰り返し使って、根気よくやってみたら」とアドバイスします。参考書も1冊だけを、ボロボロになるまで使い続けたそうです。首相の英語通訳を務めた経験談とともに、英語に苦手意識がある人にでもできそうな学習法を聞きました。

鶴岡公二さん

つるおか・こうじ 1952年生まれ。76年に外務省に入り、20代後半から外相の英語通訳、次いで首相の通訳を務める。国際法局長、総合外交政策局長を経て、2012年に外務事務次官に次ぐポストである外務審議官に就任。翌年からはTPP(環太平洋経済連携協定)政府対策本部の首席交渉官、16年からは駐英大使を務めた。19年に退官し、現在は政策研究大学院大学内の研究機関「政策研究院」のシニアフェローとして国際関係などを教えている。

 ――鶴岡さんは1980年代を中心に約10年間、首相の英語通訳を務めました。担当したことがある首相は大平正芳氏から海部俊樹氏まで6人。昭和天皇や今の上皇さまの通訳も経験しています。どういう生い立ちだったのでしょうか?

 「父親も外交官だったことから海外生活が長く、幼稚園時代はイタリア、小学校時代はスウェーデンで過ごしました。ただ、英語圏に住んだのは、高校2年のときに移り住んだニューヨークが初めて。ここで英語の猛特訓をさせられますが、日本で過ごした中学時代が役に立ちました」

 ――中学時代はどういうことをしていたのでしょうか?

1冊の参考書、ボロボロになるまで

 「塾で使っていた参考書が『新自修英文典』という分厚い文法の本だったんですが、これをボロボロになるまで読みました。繰り返し読んだことで、本に詰まっている文法の知識が体系だった形で、頭の中に整理されて残りました」

 「繰り返し読むのだから、いい教材を選ばなければならない。この本は大正時代に初版が出た当時のベストセラーです。昔から残っているものというのは、淘汰(とうた)を経てきたということで、価値があるのだとわかります」

 ――一見、古くさく感じても、昔から知られている参考書をひもといてみるのは一つの手かもしれませんね。ニューヨークの高校ではどうやって英語を覚えたのでしょうか?

 「歴史に関する専門書や文学…

この記事は有料記事です。残り4168文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません