メッセージ1万件、住民救ったラジオ局の奮闘 トンガ噴火から1カ月
南太平洋の島国トンガを襲った海底火山の噴火と津波から1カ月がたった。計4人が犠牲になったが、ほとんどの住民は高台に逃げるなどして無事だった。その裏には地元で愛されてきたラジオ局の奮闘があった。
地元FM局「ラジオヌクアロファ」のパーソナリティー、フィリペ・フニさん(36)は1月15日の噴火の瞬間、雷のような音を聞いてスタジオの外に出た。空には噴煙が立ち上っていた。走ってスタジオに戻り、マイクに向かった。
唇が震えたが、息を深く吸い、力強く発声した。「噴火です。津波が迫っています。すぐに高台に避難してください!」
フニさんの自宅は沿岸部にあり、家族のことが心配だった。「ラジオを聞いていてくれ……」。そう念じながら15分間、避難を呼びかけた。住民が続々と避難所に集まった。
ラジオは伝言板の役割も果たした。「家が全壊した」「私は無事」。局にかかってきた電話を番組につなぎ、被災者の声をそのまま流した。受け取ったメッセージは、最終的に約1万件に上った。
住民からは明るい曲やラブソングのリクエストが相次いだ。「津波で傷ついた心を癒やすためかもしれません」。フニさんは同僚2人と交代しながら、今日も声を届けている。(ジャカルタ=半田尚子)
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