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県唯一の介助犬、認定に向け奮闘中 「存在、広く知って」

根津弥
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 手や足に障害がある人をサポートする介助犬になるため、宮城県内で1頭の犬が訓練に励んでいる。ラブラドルレトリバーのオン(3歳、オス)。県唯一となる介助犬認定を目指して、街なかで奮闘中だ。

 「オン、テイク!」

 先月19日、仙台市青葉区地下鉄南北線北四番丁駅。車いすに乗る我妻進之(わがつまのぶゆき)さん(50)=仙台市青葉区=の指示で、オンが地面に落ちた定期入れをくわえた。今度は「ギブ!」のかけ声。我妻さんの手元に、無事に定期入れを運んだ。

 オンが挑戦したのは、地下鉄の乗車訓練。車いすユーザーは物を拾うのが難しく、落とした物を代わりに拾うのは代表的な介助の一つだ。足が不自由な我妻さんの介助犬となるべく、今月22日の認定試験に向けて訓練を重ねている。

 我妻さんは県内唯一の介助犬ユーザー。ラブラドルレトリバーの介助犬グレープ(7歳、オス)とペアだったが、昨年11月にグレープが引退。新たな相棒として、オンを特訓している。

 きびきびした「長男タイプ」のグレープに対し、オンはおっとりした甘えん坊の「末っ子気質」。「オンのことをもっと知り、意思疎通を深めていきたい」と語る。

 我妻さんが車いすユーザーになったきっかけは8年ほど前。椎間板(ついかんばん)ヘルニアの発症から「複合性局所疼痛(とうつう)症候群」という神経障害を誘発し、足にしびれややけどのような痛みを抱えた。

 車いすを使い始めて間もないころ、当時住んでいた札幌市で、車輪が雪にはまり動けなくなった。介助犬がいれば雪道を越える時に手伝ってもらえるのではないかと考え、日本介助犬協会(横浜市)に相談した。

 「介助犬が世界を広げてくれた」と言う我妻さん。協会は犬の貸与にあたってユーザーに社会参加を求めており、我妻さんはこれを機に、パラスポーツに取り組み始めた。初めは学生時代にやっていたバドミントンに挑戦。さらにパラカヌーでも力を伸ばし、日本障害者カヌー協会の強化育成指定選手に。あと一歩で東京パラリンピックに出場できるところまで成長した。

 今もカヌーの練習を積みながら、学校や企業での講演活動に取り組む。「介助犬がいると、周囲の人に頼らず出かけられることが大きい」と話す。

 厚生労働省によると、介助犬や盲導犬などの補助犬は全国で979頭(昨年10月1日現在)。介助犬はこのうち57頭にとどまる。

 身体障害者補助犬法は不特定多数が利用する施設で介助犬などの同伴を拒むことを禁じているが、我妻さんは「飲食店で『NG』と言われたこともある」と打ち明ける。また犬好きの人ほど声をかけたり触ったりしがちだが、犬の注意がそらされてしまうので控えた方がいいという。「介助犬の知識がない人も多い。存在を広く知ってもらい、見守ってほしい」(根津弥)