軽くて頑丈、クルマの技術で自転車ロック開発 原動力は若手の危機感
クルマの燃費と衝突時の安全性をともに高めるには、軽くて頑丈な部品が欠かせない。そんな部品づくりにこだわってきたアイシン高丘(愛知県)が、自転車を盗難から防ぐ強固なロックを開発した。新分野に挑んだ原動力は、若手社員らが抱いた危機感だった。
このロックは「ブレード」と呼ぶ板状の部品を鎖のようにつなげたもので、両端をつけて輪にできる。これで自転車を柵などにくくりつけて、持ち去られないようにする。
最大の売りは、自動車部品の技術で実現した「堅牢さ」だ。鉄筋や棒状の鋼材の切断で使う特別な工具でも、たやすく切れないという。
材料には車のドアやバンパーに使う強度の高い鋼板を採用。加熱や急冷によって複雑な形の部品をつくる特殊な工法を用いた。ブレード同士の結合部も1トンの重さに耐えられるように加工してある。
扱いやすさも重視し、折りたたむと手のひらに収まるサイズにした。重さは、海外メーカーの競合品より4割ほど軽い約850グラムに抑えた。
昨年12月から今年1月に、クラウドファンディングのサイトに定価2万4千円(税込み)で出品すると、目標を大きく上回る300万円超を売り上げた。軽量化などの改善も加え、年内の本格販売をめざしている。開発のまとめ役の酒井雅大さん(27)は「自動車で培ってきた技術力や品質へのこだわりを注ぎこんだ商品にしたい」と意気込む。
自動車業界は激変期にある。脱炭素化の流れを受け、走行中に二酸化炭素が出ない電気自動車への移行が進む。アイシン高丘はエンジン関連部品を中心に受注が減っていくとの危機感を強め、2019年から新規事業の開拓を本格化した。メンバーを公募すると、酒井さんら若手社員が続々と集まってきた。
人の命を守ってきた技術を…