「一番好きなエレメンツ(要素)はスロージャンプです」
木原龍一とペアを組む三浦璃来は、そう言って目をキラキラと輝かせる。アクロバティックなことが大好き。女子のペア選手として、それは一番大切なことだ。
木原が三浦の体を背後から持ち、思い切り放り投げる。演技の前半に組み込むスロー3回転ルッツジャンプだ。木原から加えられた力を生かし、空中で高く跳び上がってから体を締める。この時、体の軸がぶれない。着氷は柔らかく、フリーレッグも美しく――。その安定感は昨季の世界選手権10位という名にふさわしいものだ。
5歳の時、ディズニーアニメの「ポップアップ ミッキー/すてきなクリスマス」というDVDの中に出てくるスケートのシーンを見て、「私もできるよ」。母親にせがんで、兵庫県尼崎市のリンクでスケートを始めた。
「ペアに向いているのでは?」と当時のコーチに後押しされたのは小学4年生の頃だ。日本スケート連盟が主催するペアのトライアウトに参加。中学2年まではシングルとかけもちをしていたが、中学3年の頃に「シングルと並行するのはしんどい。スロージャンプも跳べなくなるし、ペアに専念したい」。ペア一本に絞った。
名古屋で指導者として活躍する元ペア選手の若松詩子コーチは日本連盟のトライアウトで三浦を教えることがあった。「小さくて元気いっぱいな少女でしたね。スタミナもものすごくあって、トライアウトの合宿では、練習が終わっても『まだやりたい!』と言っていました」という。若松コーチがペア向きの女子として挙げるのは「できれば小柄な選手。そして何より、リフトやデススパイラルなどアクロバティックなことをやっても怖がらない気持ちの強さ。恐怖心ではなく、それが楽しいと思えること」。三浦はその条件にぴたりとあてはまった。
でも、両親が心配していたの…

フィギュアスケート特集
グランプリファイナルの結果や、注目選手の最新情報はこちらから[もっと見る]