様々な分野に影を落とす新型コロナウイルス。社会・文明批評などの観点から、自作詩をはじめとする作品を発表してきた書家の石川九楊さん(77)は「日本語と文字を書く文化の乱れが加速している」と指摘する。どういうことなのか。(編集委員・宮代栄一)
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絵画のようにも見える独特の書きぶりが特徴的な石川さんだが、今までに何度か自分の作品が未来を見通していたような経験をした、と話してくれた。
たとえば2001年に起きた米の同時多発テロ。ツインタワーが崩れる映像を見た時、前年と前々年に書いた作品「カラマーゾフの兄弟」と「罪と罰」で表現した、何かが落下して高層建築が壊れていくイメージが現実になったと感じた。
「でも、今のような状況は予想していませんでしたし、作品にもしてきませんでした。コロナウイルスの感染拡大であらゆる街から人が消えたかと思うと、それを忘れたかのように、一気に人が街にあふれる。大変な時代に居合わせたとは感じますが、今は自作詩を書く気にはなれずにいます。コロナウイルスは自然がもたらしたものであり、基本的には受け入れるしかないと思うからです」
ウィズコロナにGo Toトラベル。石川九楊さんはコロナ禍で登場した新語を挙げ、「日本語と文字を書く文化の乱れが加速している」と指摘します。文字を書かなくなった私たちに起こることは。
「ですが、『今までのつけが…

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