インド太平洋戦略、「日EUで連携強化を」 仏・EU大使が本紙寄稿

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 欧州のインド太平洋戦略をめぐり、フィリップ・セトン駐日仏大使とパトリシア・フロア駐日欧州連合(EU)大使が、朝日新聞に「インド太平洋における日・EUパートナーシップの強化に向けて」と題した寄稿をした。寄稿文は次の通り。

     ◇

 パリで2月22日、EU理事会議長国を務めるフランスと欧州対外行動庁(EEAS)が共催し、インド太平洋協力に関する閣僚フォーラムが開かれる。EU加盟国とインド太平洋諸国からそれぞれ同数の外務大臣、欧州機関やインド太平洋圏の地域機関が参加する。フォーラムでは、2021年9月16日にEUが発表し、10月に加盟国首脳レベルの支持を得た「インド太平洋における協力のための戦略」の具体的実施が焦点となる。

 フランスは、このイベントを重要な優先事項と位置づけている。フランスは同地域に海外領土を持つインド太平洋国家である。18年にはEU加盟国として初めてインド太平洋戦略を策定した。この戦略を構成する四つの柱は、安全保障と防衛、多国間主義の推進と法の支配、国際公共財(気候、生物多様性、海洋、保健)の発展、そして経済安全保障である。

 他のEUの加盟国もそれぞれ国家戦略を採択しており、その実施によりここ数年来、EU各国がインド太平洋地域におけるプレゼンスを高めている。最近のフランスやドイツオランダの軍事展開はこのことを具体的に示している。

 そして今、EU全体がこの地域への関与やパートナーシップを強化する意思を持っている。そのために、EUの戦略は多国間主義と法の支配に基づくグローバルなアプローチを軸とする協力と連携のモデルを掲げる。環境移行から海洋ガバナンス、デジタル関連から安全保障・防衛に至るまで、私たちに共通する課題に立ち向かうことを目的としている。

 インド太平洋地域は、沿岸国の政治的・経済的発展、技術的課題、地域主体の間での競争の激化、領土や海洋における緊張状態など、新たな変遷に伴い、その戦略的重要性を増している。他にも潜在的、あるいは実際の脅威がこの地域に影響を及ぼしている。北朝鮮の核・弾道ミサイル開発プログラム、テロの脅威、海賊、ペルシャ湾やインド亜大陸での緊張などだ。高ずればインド太平洋諸国の安全保障や国益、繁栄に直接打撃を与える。さらには地域外、特にEUや加盟国にも重大な影響を及ぼす。

EUにとって「日本は特別」

 EUの戦略は、その実施を通じ、まさにこのような課題に、地域国と連携して対応しようとするものである。そのため、フォーラムでは、主に安全保障・防衛の課題、欧州委員会が発表したインフラ整備の「グローバル・ゲートウェー」構想に基づく連結性とデジタルの課題、さらには国際保健や海洋の保全、生物多様性、そして共同で策定したパリ協定の気候関連の目標などが議論のテーマとなる。フォーラムはこのすべてにおいて、具体的なプロジェクトや実施に向けた展望について、合意を取り付ける機会となる。質が高く国際的な価値や基準をベースに、包摂的で開かれたアプローチがとられる。

 当然のことながら日本は、私たちが優先的に共に作業を進めたい特別なパートナーである。EUと締結している様々な連携協定が築き上げた緊密な絆だけではなく、日本は2016年以来、法の支配、航行の自由、自由貿易の推進、経済的繁栄や平和と安定に向けた取り組みを軸に据え、「自由で開かれたインド太平洋地域」のビジョンを掲げている筆頭国の一つなのだ。

 EUも日本も、政府や国民がしっかりと将来を見据え、多くの野心的な目標を共有している。だからこそ私たちは今、EUと日本をつなぐ戦略的関係の深化を基盤とし、両者のインド太平洋地域での協力を継続し強化することを呼びかける。立ちはだかる課題を捉えるべき機会に変え、それぞれの国、そしてインド太平洋地域全体に、よりつながり合い、より安全で、より環境に配慮し、より繁栄した社会を手を携えて築き上げようではないか。

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