アート×デジタル捺染 ファッションに新風を

永井啓子
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 環境にやさしく高画質・高精細な印刷技術で芸術作品を布地にプリントし、服を作る試みが、京都大で進められている。コンセプトは「アートをまとう」。土佐尚子・京都大特任教授の講座と、セイコーエプソン(本社・長野県諏訪市)が、インクジェット技術を使って芸術家オリジナルデザインの服飾品を必要な量だけ生産・販売する仕組みの事業化を目指し、共同研究を始めた。

 服のデザインに使う題材は、土佐さんの映像作品「サウンドオブいけばな」。土佐さんはメディアアーティストとして、科学技術を応用した芸術に取り組んでいる。この作品は、絵の具などの液体に音の振動をぶつけ、様々な色が融合しながら粘りけのある液体が飛び上がる様子を、1秒間に2千コマの高速度カメラで撮影したもの。液体の動きという自然現象に、生け花の型であるアシンメトリー(左右非対称)な美しさがあることを明らかにしたとして、国内外で高く評価されている。

 共同研究では、作品の一コマを、インクジェットプリンターを使った「デジタル捺染(なっせん)」で布地に直接プリント・転写した。シルクのドレスシャツや、ネクタイ、Tシャツなど、これまでに50点を制作。土佐さんの授業を受け、興味を抱いた京大生らも縫製などを手伝ったという。

 デジタル捺染は、細かいグラデーションや微妙な色調の再現が可能。機械も小型で、大規模な設備で大量に生産し輸送するのではなく、必要な時に必要な分だけ消費地の近くで生産できる。「版」を使って色ごとに何度も染色するこれまでの方法と違い、水やインクの使用量も抑えられるなど、環境負荷を減らせるのも強みだ。

 昨年12月、京大本部構内でファッションショーがあり、シャツやバッグが披露された。東京の表参道・原宿エリアでも昨年11月下旬から今年1月にかけて展示やショーをしたところ、購入希望の声があった。6月にもインターネットでの受注販売を始める。

 土佐さんは「作品が服になることでアートが日常化して、人々により親しみと関心を持ってもらえる。『アートをまとう』とは、着た人の体の動きで作品の新たな一面が見え、アートな生活を楽しんでもらうことを意味する。自分の特別な日にアートを着て、晴れやかな気分を楽しんでもらえたら」と語った。

 セイコーエプソンの吉田潤吉・執行役員は、「我々の技術とアーティストのもつストーリーを融合させ、今までと違うビジネスモデルを作りたい」と話す。

 予約販売の問い合わせは(artinnovation.kyoto@gmail.comメールする)へ。東京でのショーの様子は、動画(https://youtu.be/AdCYg1hT3wE別ウインドウで開きます)でも発信している。土佐さんの講座の活動の詳細は(http://tosa.gsais.kyoto-u.ac.jp/別ウインドウで開きます)。(永井啓子)

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