多頭飼育崩壊 猫をレスキュー 埼玉・川越の保護猫カフェ活動に同行
無秩序な飼い方でペットが増えすぎて飼育ができなくなってしまう多頭飼育崩壊。不衛生な環境で、えさを満足に与えられず、衰弱したり死んでしまったりする。悪臭などで近所トラブルになる事例も多い。22日は「猫の日」。埼玉県川越市の保護猫カフェ「ねこかつ」の活動に同行した。
9日午前11時過ぎ、市内の一戸建て住宅に「ねこかつ」を経営する梅田達也さん(49)と女性スタッフ2人、民生委員の男性が入った。鼻先と頭が痛くなるほどの刺激臭が充満し、茶色く変色した壁紙は、猫たちにひっかかれてずたずたにはがれていた。猫用トイレはリビングに1個置かれただけで、糞尿(ふんにょう)で黒緑色に。やせこけた猫たちが逃げ回る、たんすやテレビ台の裏も糞だらけだ。
「ここは床が見えるだけ上等。ごみや糞が山積して窓からしか入れない家もあった」と梅田さん。こうした活動は年に6、7件ある。1回に144匹を収容したこともある。今回はその10分の1程度の予定だったが、それでも訪れたのは、近隣宅の庭で糞をするなどして深刻な近所トラブルになり、民生委員の男性から助けを求められたからだ。事前折衝で、家主の了承も得た。
逃げる猫に毛布をかぶせると、視界を奪われおとなしくなる。衰弱した猫はすぐ捕まる。持ってきたケージに1匹ずつ手際よく入れていく。「感染症の危険もあるから、ひっかかれないよう気をつけて」と梅田さんの注意がとぶ。どれもキジトラ。「近親交配しちゃってたんでしょうね」
家主の女性(70)は軽い認知症だと、梅田さんは女性の息子から聞いていた。女性によると、5~6年前に子猫が迷い込み、夫が飼い始めると、次々と子どもを生み、「孫」や「ひ孫」が増えて手に負えなくなったという。「夫は昨年亡くなり、(避妊手術などの)お金もなくなった」。捕まえたのは10匹。「あと4匹くらいいたはずですが?」。「死んだので庭に埋めた」と女性は答えた。
梅田さんによると、避妊手術をせずに飼っていて次々と子どもが生まれ増えてしまった典型例という。加えて、飼い主の病気や経済的破綻(はたん)が飼育放棄につながる。ふだん捨て猫や殺処分寸前の猫たちを救出して新しい飼い主に引き合わせている「ねこかつ」が多頭飼育崩壊にも対応するのは、解決のためにと殺処分される場合もあるからだ。
収容した10匹は、市内にある「ねこかつ」のシェルターに運んだ。一戸建て住宅内に大型ケージがびっしり並び、70~80匹の収容能力がある。ここで約1カ月間、ノミやシラミを駆除し、感染症などの有無を調べ、ワクチン接種や避妊手術にも連れて行く。その後、里親探しのため、カフェや譲渡会に向かう。
この日収容したうちの1匹は、しっぽが根元からなくなり、お尻の赤い肉がむき出しになっていた。「けがが原因で、腐って落ちてしまったらしい」。病気やけがの猫は「ねこかつ」に賛同する病院で治療する。
ほかにもシェルターで「ねこかつ」が必ずしていることがある。それまで名もなかった猫たち全部に名前をつけていくのだ。一匹一匹の将来を大切にしたいとの思いが込められている。県内外で年間に救出する猫は約500匹。ほぼ同数を里親に引き合わせている。「まだまだ処分される猫が多くて。こういう保護猫活動をしなくていい世の中にしたいんです」。梅田さんは話した。
梅田さんらの活動はカフェの収入のほかに、えさや飼育用具などの現物、資金の寄付に支えられている。問い合わせは、「ねこかつ」(070・5029・8392)へ。(西堀岳路)
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