新潟東港をバイオマス発電の拠点に 活性化に期待

里見稔
[PR]

 新潟市北区と聖籠町にまたがる新潟東港で、木材などを使ったバイオマス発電所の建設計画が進んでいる。脱炭素を進める新潟県再生可能エネルギーの生産・流通拠点と位置づける。日本海側の国際拠点港湾として伸び悩む中、活性化への期待が高まっている。(里見稔)

 日本海を掘り込むように造られた新潟東港。製紙会社の原料置き場や火力発電所が並ぶ工業地帯に広大なゴルフ場がある。その約3分の1にあたる約40万平方メートルに、再生可能エネルギーのバイオマス発電所の建設が予定されている。新電力「イーレックス」(東京都)と石油元売り最大手「ENEOS(エネオス)」(同)が出資し、発電量は約30万キロワットで新設のバイオマス発電所では世界最大級だ。

 ロシア・北米からの木質ペレットのほか、開発中のイネ科の植物「ニューソルガム」を燃料に想定。2026年度の稼働開始に向け環境アセスメントの手続きが進んでいる。

 約2キロ離れた工業団地内にも東北電力仙台市)とシンガポールに本社を置く再エネ事業者「エクイス」もバイオマス発電所の建設を計画している。主に東南アジアからの木質ペレットを燃料に約5万キロワットの発電量を見込む。24年の稼働を目指している。

 県の新エネルギー資源開発室の担当者は「詳細は明かせない」としつつも、周辺では他にも複数の事業者がバイオマス発電所の参入を検討しているという。

 発電所の集積が実現すれば、建設時だけでなく稼働後も様々な分野で活性化が期待できる。昨年、地元の経営者や地方議員らの勉強会も発足し、関係者からは「最後のチャンスだ」と歓迎ムードが高まっている。

     ◇

 新潟東港が開港したのは高度経済成長のまっただ中の1969年。大規模工場の立地を想定し、用地買収を進めた。だが、70~80年代の二度の石油危機を経て産業構造が変化。工場の誘致は想定通り進まなかった。

 80年代にはコンテナ積み下ろしの大型ガントリークレーンが作られ、中国・韓国との貿易が盛んになり、コンテナ取扱量も増加。環日本海経済研究所(新潟市)の新井洋史・主任研究員は「この頃から新潟東港は『工業港』から『物流港』に変わっていった」。工業用地は細分化され、食品加工工場や運送の倉庫、県警の運転免許センター、サッカー練習場もできた。

 こうした事情が近年の発電所建設の背景になっている。エクイスが計画する発電所予定地は、もともと空き地。港から直線約1・5キロと近く、陸揚げした燃料の輸送コストも抑えられる。設備冷却用の工業用水などのインフラも備わる。

 業界団体「バイオマス発電事業者協会」(東京都)によると、燃料を国内で安定供給するのは現状では難しく、海外からの輸入に頼ることが多いという。新潟東港は大型船が着岸できて、周辺にも土地がある「好立地」という。

     ◇

 植物由来などの燃料を使うバイオマス発電は、発電量が火力発電の半分ほどで発電効率の向上が課題。だが、環境への負荷が小さいエネルギーとして注目を集めている。バイオマス発電事業者協会によると、2021年3月の導入量は197万キロワットで、ここ数年で急増している。25年3月には411万キロワットに増える見込みという。

 拠点化しつつある港もある。茨城県の鹿島港はバイオマス発電所が5基あり1基が計画中。愛知県の半田港でも複数の建設計画が進んでいるという。新潟東港でも集積が進めば「港湾、運送などのビジネスに大きな影響があるはずだ」(同協会の山本毅嗣代表理事)とする。

 50年までに「温室効果ガス排出ゼロ」を掲げる県は、新潟東港を将来的な再生可能エネルギーの流通・生産拠点と位置づける。来年度の予算案に脱炭素計画の策定を盛り込んだ事業費計約3千万円を計上。今後、水素発電などの立地を念頭に、バイオマス発電を「再エネの中でも大事な役割」(担当者)とする。

 県新エネルギー資源開発室の覚張(がくはり)昌一室長は「カーボンニュートラルの拠点として県全体の次世代エネルギーの発展につなげたい」。来年度からはバイオマス発電など再エネ事業に取り組む事業者や国とともに、港の脱炭素計画を策定していく予定という。

     ◇

 〈新潟東港〉 1969(昭和44)年開港。信濃川河口にある新潟西港(新潟市中央、東区)と新潟港を形成する。江戸時代北前船の寄港地だった新潟港(現在の西港)の拡張のため、海岸線を掘り込んで造られた。西港は旅客輸送、東港は物流の拠点とすみ分けしている。貿易用コンテナの取扱量は、2020年現在で約17万2600TEU(1TEUは20フィートのコンテナ1個分)で、本州日本海側では最大。全国では苫小牧(北海道)、仙台塩釜(宮城県)に次いで12番目となる。