第21回ロシアの偽情報作戦、ソ連時代から「お家芸」 ウクライナ危機の深層

有料記事ウクライナ情勢

聞き手・軽部理人
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 ロシアが24日、ウクライナへの全面的な侵攻作戦を開始しました。以前から米国は、ウクライナ東部を支配する親ロシア派勢力がウクライナから「攻撃を受けた」と事実をでっち上げ、ロシアが侵攻の口実に利用する「偽旗作戦」を用いてくると警告していましたが、それが的中した形です。そもそも、ロシアが多用するとされる「偽旗作戦」とは何なのか。インテリジェンス(機密情報)に詳しい小谷賢・日大危機管理学部教授(国際政治学)に、ロシアの手口を聞きました。

米国の異例の戦略、プーチン氏には効果なく

 ――ロシアがウクライナに侵攻しました。

 いきなり軍事的な侵攻になったことは驚きです。限定的なサイバー攻撃から始めて、徐々に圧力をかけていくことが予想されたので。

 ――米国は今回、本来であれば秘匿するインテリジェンスを次々と公表し、侵攻をロシアに思いとどまらせようとする異例の戦略をとってきました。しかし、結果的に防げませんでした。

 米国としてはよくやっていたと思います。バイデン大統領ら政府高官も、全員が口をそろえて「戦争が始まる」と警告していました。国際社会を結束させ対応させるには有効でしたが、残念ながら侵攻の意図を固めていたプーチン大統領の前ではあまり効果がありませんでした。

 ――米国が公表したインテリジェンスの中には、ロシアが「偽旗作戦」を使っているとするものもありました。そもそも、なぜ「偽旗」というのですか。

 一説によると、海賊の動きが盛んだった時代、「降伏する」との旗を掲げた海賊が敵を油断させて逆に相手の船を乗っ取るという行為が頻発し、それが語源だと言われています。英語では“false flag operation”と呼ばれています。

 ――ロシアは一連のウクライナ問題で、どのような偽旗作戦を行ったのですか。

 例えば「ウクライナ軍によって、東部のロシア系住民が虐殺されている」、「ウクライナ軍による砲撃が激化している」というような、写真や動画つきの情報がネット上にアップされました。そして偽情報をロシア国営放送やスプートニクといったニュースサイトが取り上げる。それによってロシア国内、そしてウクライナ東部のロシア系住民の憎悪をウクライナ政府に集め、ロシアがウクライナを攻撃しやすくすることを狙ったものと思われます。しかし現状、偽情報の多くはウクライナの親ロシア勢力によって作られているようで、実はアップされた遺体写真が過去のものだと即座に指摘されるなど、精度はあまり高くありませんでした。もしロシアの連邦保安局(FSB)や軍参謀本部情報総局(GRU)が本格的に関わっていたら、もっと洗練されていた可能性もあります。ロシア政府のアドバイスはあったのかもしれませんが、基本的には東部を占拠する親ロシア派勢力の手によるものでしょう。

 ――どういうことですか。

 本来のロシアの手口は、正し…

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