袴田さん再審、検察側が意見書 弁護側の新証拠「考察足りず不適当」
静岡県で1966年に起きた強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さん(85)の裁判をやり直すよう求めた再審請求審で、弁護側が証拠捏造(ねつぞう)の根拠とする専門家の鑑定について、検察側が「考察が足りず不適当だ」とする意見書を東京高裁に提出した。
事件では、袴田さんの逮捕から約1年後にみそタンク内から見つかった衣類が犯行着衣とされた。衣類には赤みのある血痕が残っていたが、弁護側は、1年間みそに漬かればメイラード反応により血痕は黒褐色になることから「袴田さん以外の者が衣類をタンクに入れた」と主張。最高裁は20年12月、血痕の色が変化する要因に絞って審理のやり直しを高裁に命じた。
検察側「論理的な推論がない」 独自で実験も
弁護団は昨年、メイラード反応だけでなく別の化学反応でも赤みが消えるとする専門家の鑑定書を高裁に提出。「再審開始につながる決定的な証拠だ」と主張していた。
これに対し検察側は今回の意見書で、検察側の独自実験では衣類の血痕をみそに約5カ月間つけても赤みが残ったと指摘。そのうえで「衣類にしみこんだ血痕は化学反応が起こりにくい」と説明し、弁護側の鑑定書は「血痕の色調変化について論理的な推論がない」と訴えた。
弁護団は取材に「検察の意見書は最高裁が求める『色の変化の要因』に言及しておらず、反論になっていない」と話している。(新屋絵理)