フグの処理師試験、取得条件緩和へ 消費拡大に期待も

高橋豪
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 フグの取扱量日本一を誇る下関の南風泊(はえどまり)市場をかかえる山口県で、有毒部位を取り除く処理ができる資格「ふぐ処理師」の取得条件が緩和されることになった。県内では、処理師の高齢化や受験者数の減少が進む。業界関係者からはフグの消費拡大にもつながるのでは、と期待の声もあがる。

 山口県で「ふぐ処理師」の資格を取るにはこれまで、処理師がいる現場で3年の実務経験を経たあと、学科試験とフグの種類や食べられる部位の鑑別、さばきの技術を試す実技試験をパスする必要があった。

 昨年12月の県議会定例会で、フグの処理に関する県条例の改正案が可決、成立し、この実務要件が撤廃された。新しい認定基準は今夏の試験から適用される。

 出荷がピークを迎える繁忙期の昨年12月、南風泊市場を運営する下関唐戸魚市場の郷田祐一郎社長(58)は「興味をもち、知識をもとうという人が少しでも増えるならいいことだ。知識はあるが実務経験がなかったフグ漁師やその家族も、試験を受けられるようになる」と歓迎した。

 県内では近年、資格取得試験の受験者数の減少が目立っていた。県生活衛生課によると、年1回行われる試験の今年度の受験者は17人。17年度の43人の半数にも満たなかった。また、ふぐ処理師の資格をもつ人は昨年10月18日現在、4534人(現役の可能性が高い80歳未満)いるが、うち65歳以上が約6割を占め、高齢化も進んでいる。

 フグ処理の資格は各都道府県が認定するが、資格制度の認定基準は都道府県ごとにバラバラ。厚生労働省によると、2019年現在、試験を課すところは山口を含めて31あるが、実務経験の有無やその年数、調理師免許の有無など、受験の要件や求められる知識、技術も異なる。

 厚労省は19年、各都道府県に対して「実務経験の客観的な評価は困難であり、認定要件として適切ではない」との通知を出した。実務経験を問わずに知識や技術を試験で確認する方向で、全国的な基準の統一化を求めていた。

 南風泊市場で入荷されたトラフグを、ふぐ処理師が毒を取り除いて「みがき」の状態にしたものは「下関ふく」と呼ばれる。16年には、地域ならではの産品をブランド指定する国の地理的表示保護制度(GI制度)に、水産物では初めて登録された。

 下関唐戸魚市場仲卸協同組合の酒井一理事長(62)は「フグ食文化を普及させるためには(毒を処理する)技術者が必要。実務経験は和食だけでなく、中華やフランス料理屋が参入する障壁になっていた。和食以外でフグがもっと使われるようになれば、輸出も進むだろう」と消費拡大に期待を寄せた。(高橋豪)