横浜中華街の歴史を探る映画

伊藤繭莉
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 華僑4世の男性が自身のルーツと向き合いながら、横浜中華街の戦後史に迫るドキュメンタリー映画「華(はな)のスミカ」が、千葉県柏市のキネマ旬報シアターで3月12日から上映される。日本、中国、台湾をめぐって翻弄(ほんろう)された、華僑の苦境と葛藤を4世の目線で描く。

 監督の林隆太さん(38)=川崎市=は、中国・福建省にルーツを持つ父親と、日本人の母親を持つ。15歳の時、父が華僑3世だと初めて知ったが、中国に良い印象がなく、出自を隠そうとした。映画では、目を背けてきた自分のルーツを、中華街の歴史と共に探っていく。

 物語は、10年前に偶然見つけた古い写真から始まる。学生だった父が、中華街で毛沢東語録を持ち、紅衛兵の格好でパレードする姿が写っていた。

 冷戦期、中華街は台湾系と大陸系に分裂した。1952年、横浜中華学校で毛沢東を支持する教育が行われているとして、教師が学校から追放される事件が起きた。事件後、華僑社会の台湾系と大陸系が対立。長らく続いたが、86年に中華街の象徴である関帝廟が火事で焼けたことから、再建するために両者が歩み寄っていく。

 映画では、大陸系の学校に通った父や父の恩師、台湾系の人らから話を聞いていく。

 林さんが自分のルーツと向き合うきっかけとなったのは、米国留学だった。日本では、中国にルーツがあることで友人から悪く思われることを恐れ、出自を言わないようにした。「日本人でありたい」と葛藤した。

 ところが留学先では、アジア系移民の友人たちが祖先の移住の歴史を誇らしく語っていた。そんな姿を見て、自分のルーツを知ろうとせずに隠すことは、父や祖先の存在を無視することになると思うようになった。帰国後、10年かけてこの映画を作った。

 日本には、自分と同じように海外にルーツを持つが、隠そうとする人たちがいると感じている。「葛藤を抱えている人たちが安心して暮らせるような社会になってほしい」と林さん。映画を通じ、「日本の中にもいろんなルーツを持つ集団がいる。長い間同じ場所で一緒に暮らしてきた人たちの歴史を知ってほしい」と願う。

 千葉県流山市出身で、作品のプロデューサー、直井佑樹さん(38)は「重いテーマなのに、ユーモラスに描かれている。中華街の濃厚なコミュニティーも見てほしい」。上映は3月12~25日。一般1800円。(伊藤繭莉)