第6回決め手は「L字形」の切り傷 人生を狂わす事故、被害者も加害者も…

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柏樹利弘
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 田んぼ道にトラックが止まっていた。

 運転手の男性(当時45)は涙を流しながら、妻に電話した。

 「もう俺、帰れないかもしれない」

 かたわらに愛知県警交通捜査課の交通鑑識係長の大橋一仁(60)ら、捜査員の姿があった。

 県警は男性の勤め先を通じて、男性が三重県北部にいることを確認し、任意同行を求めるため急行したのだった。田んぼ道に着いたとき、男性はすでに運転席から下り、大橋らを待っていた。

 トラックの車体にキズやへこみがないか、大橋は目をこらした。

 車体の前方に、何かを拭き取ったような跡があった。男性に尋ねると、「拭きました」と話した。

 「署に行ったら、正直に話して」と大橋。男性はうなずいた。

2021年に交通事故で亡くなった人は全国で2636人。悲惨な事故は後を絶ちません。交通事故捜査のベテラン警察官の足跡をたどって、事故捜査の現場と、事故が招く悲劇の実相に、6回の連載で迫ります。

「行き倒れかもしれない」

 男性が任意同行される1週間ほど前。

 2020年9月9日未明、製鉄所や物流倉庫が立ち並ぶ愛知県東海市の県道交差点で、女性(69)が倒れているのが見つかった。女性はその後、死亡が確認された。

 自宅で眠っていた大橋は、携…

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