ばんえい競馬から丸太運びへ転身 重機じゃできない、馬のメリット
機械化が進む林業や農業の分野で近年、馬を動力とする伝統的な「馬搬(ばはん)」や「馬耕(ばこう)」が見直されている。馬は、重機のように化石燃料を使うことはない。農林業が馬を介して、持続可能な環境作りにつながっている。
体重900キロ、途中で道草も
長野県松本市の「柳沢林業」は2016年、伐採した木材を馬で運び出す「馬搬」を導入した。今年2月上旬、本社のある集落の里山で、木材を運び出す作業に記者が同行した。
「馬方(うまかた)」を務める従業員の犬飼哲平さん(47)が、体重約900キロ、体高160センチほどの16歳のヤマトを操る。ヤマトは、北海道の「ばんえい競馬」を引退した日本輓系(ばんけい)種だ。
あらかじめ切り倒しておいた直径約30センチのエノキの丸太の前まで進むと、犬飼さんはヤマトが引く金具に丸太を固定した。「はい、行くよ」。かけ声と手綱の合図に従って、ヤマトは山を下った。
一度に運ぶのは、大きい丸太なら1本、細い丸太は数本ずつ。途中で金具が外れたり、ヤマトが道草を食べたりすることもあったが、3往復の作業は2時間ほどで終わった。
関心集める狙い→メリットたくさん
柳沢林業が馬搬を導入したのは、当時目立ち始めた松枯れの現状を地元の人に知ってもらうためだった。枯れたアカマツを馬が運び、関心を集める狙いがあった。
導入してみると、馬には重機…