独立時の紙幣にウクライナの思い 包囲されているのはロシアの方かも
編集委員・駒野剛
記者コラム「多事奏論」 駒野剛
私の手元に幅約5センチ、長さ約10センチのピンクと青の絵が描かれた、あたかもこども銀行券のような小さな紙片が残されている。
実は真正なお金である。ウクライナが独立した1991年直後に発行した通貨で通称クーポン紙幣と呼ばれた。紙幣と言っても日本銀行券にあるような記番号はない。
ソ連が崩壊しても、しばらくの間、旧ソ連の通貨ルーブルがロシア以外の独立国家共同体(CIS)各国で使えたが、ウクライナは独自の通貨発行を急いだ。通貨は経済が独立している証しだからだ。
私は92年2月、取材で首都キエフ、映画「戦艦ポチョムキン」で知られる港湾都市オデッサ、西部のリビウを駆け抜けた。
その際、米ドルと交換して受け取ったのがクーポン紙幣だった。これが本当にお札なのか、キツネにつままれたような気持ちだった。街中で使ってみてどのくらいの価値があるか分からない。
試しにキエフのタクシーに乗…
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