洪水を受け流す「霞堤」 相次ぐ豪雨や気候変動 始まった流域治水

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編集委員・佐々木英輔
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現場へ! かしこく土地を使う①

 戦国時代からの伝統がある治水工法、霞堤(かすみてい)。その堤防をたどっていくと、水をのがす場所になるはずの土地に土が盛られ、太陽光パネルが並んでいた。

 滋賀県内の川には霞堤がいくつもある。訪ねたのはその一つ、琵琶湖の東岸に注ぐ愛知川(えちがわ)だ。霞堤は、堤防を途切れさせて折り重なるように配置、洪水時は周りの水田などに水をあふれさせ、水位を下げるしかけになっている。

 しかし、その機能は縮小の歴史を歩んできた。水の行き場の多くは民有地で、開発の制限は乏しい。発電施設だけでなく、工場やごみ処理場も立地。住宅団地が造成されたところもある。

 こうした例は全国各地でみられる。「以前は地域で大切にされてきたはずなのに、せっかくの価値が伝わっていない」と滋賀県立大の瀧健太郎准教授(49)は話す。もともとリスクの高い場所。川からの水を嫌って霞堤を閉じた結果、かえって排水が滞って浸水を招いたケースもあるという。

 川を完璧に囲う堤防は、想定を超えるとどこで決壊するかわからない。一方、霞堤は決まった場所で、しなやかに洪水を受け流す。魚が水田との間を行き来でき、生態系にとっても重要な場所だ。

 瀧さんは5年前まで滋賀県の…

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