宅地開発抑える「逆線引き」波紋 災害に強いまちづくりが直面した壁

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編集委員・佐々木英輔
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現場へ! かしこく土地を使う②

 「逆線引き」という耳慣れない用語が、物議を醸している。

 「不動産価値の下落が心配」「市の許可で家を建て、やっとローンが終わったのに」

 1月に北九州市が開いた逆線引きの説明会。集まった地権者から出たのは反対の声ばかりだった。宅地開発を認める「市街化区域」から、開発を原則抑える「市街化調整区域」に編入するのが、逆線引き。通常の区域設定と逆向きなので、こう呼ばれる。

 「災害に強くコンパクトなまちづくり」を掲げる市が、まず八幡東区の候補地を示したのは2019年12月。前年の西日本豪雨では市内でがけ崩れが相次ぎ、死者も出た。人口が減るなか、リスクの高い場所の開発を防ぎ、より安全で便利な土地に住むよう少しずつ促す。そんな狙いがあった。

 製鉄業が栄えた時代に斜面に住宅が広がった地域。狭い路地や階段に沿って古い家屋が並び、空き家も目立つ。市は「おおむね30年後を目途に、ゆるやかに無居住化及び更地化」との考え方も示したが、住民には寝耳に水だった。

 「災害が多いというならもっと対策をすべきだ。一方的に追い出すようなことを言い、移転も個人のお金でというのはおかしい。地域のコミュニティが壊れかねない」。昨年、市議会の委員会で白紙撤回を求める意見陳述をした住民の池亀忠利さん(78)はこう話す。

 調整区域でも住み続けることはでき、都市計画税は不要になる。一方で、販売目的の新築や新たな賃貸はできなくなる。土地の買い取りや代替地の提供はない。財産権の侵害との声が上がった。

 市が根拠にしたのは、安全性…

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