「面倒なだけ」不正の背後にアナログ作業 統計書き換えなぜ起きた?
「一生懸命書いているのに正しく集計してもらえないなら、『もうやめた』と言いたくなりますよ」。政府の求めに応じ、「建設工事受注動態統計」の調査に20年以上協力してきたという北陸地方のある住宅メーカーの役員は嘆く。
昨年12月、建設業者が毎月提出する調査票の数値を国土交通省が無断で書き換えていたことが朝日新聞の報道で発覚した。
この統計は、建設産業行政の各種施策の基礎的なデータとなるだけでなく、国の経済規模を示すGDP(国内総生産)の算出から、中小企業支援制度の対象となる「不況業種」の選定まで幅広く使われる。政府の統計の中でも特に重要な「基幹統計」の一つだ。
統計は「社会を映す鏡」と言われる。統計法は真実に反する統計を故意に作成することを禁じており、統計の元となる生データを書き換える行為はもちろん「禁じ手」だ。別の経済官庁で統計を所管する幹部は「公的統計はちょっとした変更でも必ず第三者の目を通す仕組みになっている。報告もせずに(生のデータを)現場で書き換えるというのは考えられない」。
2018年末に発覚した毎月勤労統計の不正でさえ、そこまでの行為はなく、「今回の国交省の件の方がより悪質」(初代統計委員長の竹内啓・東京大名誉教授)という指摘すら出ている。
なぜ国交省は「一線」を越えてしまったのか。同省が設置した検証委員会の調査報告書でも、明らかにはされなかった。
国土交通省の統計不正が2021年12月15日に朝日新聞の報道で発覚しました。政府は問題を認めて謝罪しましたが、疑問は山積みのままです。統計を巡る不祥事はなぜやまないのか。その背景とデータ軽視がはらむ問題点について考えます。
回収率の低さに悩み
ただ、取材の過程で、引っかかる言葉を聞いた。問題が表沙汰になる前の昨夏、国交省の担当者は取材に書き換えが始まった背景をこう推測していた。「次善の策だったのかもしれない」
この統計は国交省が毎月、全…
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