「一歩一歩無実だと歩きつづける」 死刑囚の兄へ、妹が記した覚悟
「道を歩く時も一歩一歩無実だ無実だと毎日死ぬまで歩きつづける覚悟です、頑張ります」
「名張毒ブドウ酒事件」の奥西勝・元死刑囚=2015年に病死=に宛てられた、50年前の手紙だ。
差出人は妹の岡美代子さん(92)。死刑確定から約2カ月が経った72年8月、兄の無罪を信じる強い決意をしたためた。
事件は三重県名張市で1961年に起きた。公民館で開かれた懇親会で、ブドウ酒を飲んだ女性17人が中毒症状を起こし、5人が死亡。奥西元死刑囚が逮捕された。
一審・津地裁は無罪としたが、二審・名古屋高裁は死刑を言い渡し、最高裁で確定。奥西元死刑囚は、無罪を訴え続けながら89歳で病死した。
死後、妹の岡さんが再審の請求人を継いだ。
第10次再審請求の異議審で、名古屋高裁が再審開始を認めない決定をした3日も、「命ある限り、再審無罪を果たし、兄の名誉を回復するために頑張りたい」と、無罪を訴えつづける覚悟を述べた。
手紙は面会などの際、奥西元死刑囚が支援者の川村富左吉さん(故人)らに託した。岡さんと夫(同)が70~94年に出した計約60通の手紙などを、川村さんが内容をワープロで打ち直した。
特別面会人として支援してきた稲生昌三さん(83)が引き継ぎ、他の遺品と共に保管している。
手紙には、獄中の兄を思う心境が率直につづられている。
獄中の兄へ――岡美代子さんは死刑判決が確定した後も、兄の無実を信じてきました。月1回のペースで面会し、別れ際には「元気をしてね、また来るわね」と励ましていたといいます。記事後半では手紙の文面から、きょうだいの絆をたどります。
「名古屋の方の空を眺めなが…