栃木のお酒の強みって? ワイン業界の権威に聞く

聞き手・庄司直樹
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 ワイン業界で最も名声の高い「マスター・オブ・ワイン(MW)」の資格を持つ大橋健一さん(55)=宇都宮市出身=が、栃木県の魅力を発信する「とちぎ未来大使」に就いた。国際的なコンクールの日本酒部門の議長職も務める大橋さんに、栃木の酒の特徴や売り出し方のヒントなどを聞いた。

 未来大使就任のきっかけは、県酒造組合から紹介動画の監修を依頼されたことだった。昨年末に完成した動画は組合のHPなどで見ることができる。

 ――栃木は30余りの酒蔵がある酒どころ。どんな印象を持っていますか

 「動画監修に先駆け、全蔵元の銘柄を分析データを取りつつ試飲しました。改めて感じたのは、おしなべて品質が高いこと。数値、私の感覚のいずれでも裏付けられました。豊かな自然が生む水、酒造好適米など原料の質がよいことが理由に挙げられるでしょう」

 大橋さんは、英国・ロンドンで開かれる世界最大級のワインコンクール「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」(IWC)の審査員のほか、日本酒部門の共同議長を務める。独立行政法人酒類総合研究所などが主催する全国新酒鑑評会の決審審査委員でもあり、各地の酒に詳しい。

 ――県産日本酒の味の特徴は

 「全体的に淡麗で辛口。それでいて味わいの後半にふくらみがある。香りの立ちは決して強くないスタイルです。白身魚の刺し身や蒸したり煮たりした料理など淡泊な味と相性がよく、料理にやさしく寄り添う食中酒と言えます。焼き物などには、あまり合わないと思います」

 MWは業界最難関の資格。醸造技術からテイスティング能力、宣伝・販売に関わる知識など関連分野に精通した証明となる。ロンドンに協会があり、資格創設から約70年間で取得者は498人。国内在住の日本人では大橋さん1人だ。大橋さんは2015年に合格した後、大手ワインメーカー・メルシャンのコンサルタントや日本航空(JAL)のワインアドバイザーも務める。

 ――栃木の酒の知名度を高めるため、どう売り出せばよいと考えますか

 「地酒というと郷土料理との組み合わせが推奨されることが多いですが、広く受け入れられるためには土地から離れることも必要。洋食や中華でも文句のつけようのない良い組み合わせを見つけられれば、県外、国外でもっと飲まれるようになると思います。アピールできる点を意識して販売促進につなげていくべきです。『どんな料理にでも合う酒』などは、自らをおとしめるようなものです」

 大橋さんは元々、宇都宮市川田町にある酒類専門店・山仁(やまじん)の3代目社長。近年は東京都内に拠点を置いて国内外を飛び回るが、栃木への思いは熱い。

 「特段の資格がなくても任命される『~大使』といった称号への就任は断るようにしていますが、故郷からの求めは歓迎。MWの強みを生かせればと思います」(聞き手・庄司直樹)