揺れる心、走る緊張、そして決断 将棋・山本博志四段の戦いの記録

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【自戦記】C級2組順位戦10回戦 先手▲上村亘五段(2勝6敗) 後手△山本博志四段(5勝3敗)

緊張感と高揚感

 この度、順位戦の自戦記を書かせて頂くこととなった。文章を書くのは好きなのでとてもうれしい話だ。あれも書きたいなこれも……と、どの将棋を題材に選ぶか嬉々(きき)と迷っている間に、また順位戦の日がやってきた。

 それが本局の上村五段との一戦というわけだが、新しい工夫でそれなりにうまく指すことが出来た将棋であったし、何カ月も前の対局のことを書くよりも鮮度のある文章が書けそうだと思った。

将棋の山本博志(やまもと・ひろし)四段は、1996年生まれ。東京都出身。2018年プロ入り。振り飛車の一つである三間飛車を得意とする。師匠の小倉久史七段との共著に「三間飛車新時代」「三間飛車戦記」がある。順位戦はC級2組に所属。2月3日にあった上村亘五段との10回戦をどのように戦ったのか、つづってもらいました。

 いくら通い慣れても毎回緊張感をくれる対局室、触れるだけで高揚感高まる素晴らしい盤駒。相手の表情、お気に入りの扇子、ラムネ、チョコレート……。あの空間がまだ生々しいうちに筆を執って、色付いた文として残しておくのが良いであろう。

角交換振り飛車

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4二飛4 ▲6八玉1 △6二玉 ▲7八玉1 △5二金左 ▲2五歩4 △8八角成3 ▲同玉15 △2二銀3 ▲7八銀1 △3三銀 ▲4八銀2 △2二飛11 ▲4六歩2 △9四歩20 ▲9六歩9 △7二銀14(指し手の後の数字は消費時間〈分〉、1分未満は切り捨て)

 持時間各6時間 消費▲39分 △59分

 2月3日の朝10時、対局が始まる。

 4手目の△4二飛に4分。藤井猛九段が開拓した角交換振り飛車の出だしである。腕を組み、斜め上方を眺める。

 ご存じの方はありがたい限りだが、私山本博志は9割9分三間飛車しか指さない偏った戦法選択で知られている。しかし、常に新しいスタイルも模索している中での毎局ごとの決断で、3筋に飛車を振っているだけのことだ。

 それに、この角交換振り飛車という作戦には少なくない思い入れもある。むしろ指したくても自分の研究知識に自信が持てずに指せないでいたというのが率直な心境であって、ようやく公式戦の舞台でこの戦法を指せるという心持ちでいた。

 そして、相手の上村五段は「真っすぐ」を信条とする居飛車正統派。自分の新しい工夫に真っ向からぶつかってくるだろう……。そんな予感も感じつつ、高揚感を抱きながらの△4二飛の着手だった。

複雑な局面に悩み、相手の出方を探り、決断する。持ち時間6時間の対局中の思考の変化のほか、角交換振り飛車への思い、順位戦を戦うことの醍醐味などがつづられます。

■奇跡的な戦法…

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