第3回「僕たちは愛し合ってる」偽装婚のウソやめ そして渡した真実の指輪
中国の性的マイノリティーを取材していて、何度も聞いた言葉がある。
「最も悩むのは、一番身近にいる、家族との関係だ」
2021年12月、広東省深圳市のレストランで会った李さん(44)=仮名=もそう考える一人だった。ゲイである自分と「家族」の関係について考え続けてきた。
李さんは2010年、結婚したことがある。相手はレズビアンの女性だった。
別に愛があったわけではない、という。
【連載】虹をかけたくて 中国のLGBTQのいま
中国に7千万人いると言われる性的マイノリティーたちがいま、激しい批判にさらされています。なぜ、多様な性が受け入れられないのか。攻撃される人、そして攻撃する人を、記者が訪ねました。
上海市の小さなホテルでの挙式だった。李さんは「新郎」として、銀色のタキシードをまとっていた。
友人たちは中国の伝統楽器「古筝(こそう)」によるあでやかな演奏を披露してくれていた。大ぶりのネックレスで着飾った「新婦」の女性は、200人もの招待客に笑顔を振りまいていた。
そんな様子を見て、李さんの両親は、満足そうにほほえみを浮かべていたという。
儒教の影響 子の結婚は一族の問題
「親をだますための偽装婚だよ。中国の性的マイノリティーの間では珍しくないことだ」。李さんはあっけらかんとした表情でそう私に語った。
李さんの本当の恋人は、その場にいた。「介添人」としてスーツ姿で李さんの脇に立っていた、王さん(36)=仮名=だ。
中国の結婚式では、招待客が…

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男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]