<おかしとことば>3月 蝶と花の約束、おだやかに晴れた日に出会う

KANSAI

編集委員・長沢美津子
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 丸く抜いた外郎(ういろう)生地を折りたたむと、お菓子の「蝶々(ちょうちょう)」が3月の空に飛び立ちました。

 「見立て」の造形は、和菓子の得意とするところです。染めた外郎を折り紙のように使ってピンクの桜、紫のカキツバタと食べる人を季節の中に連れ出してくれます。黄色い蝶には、どんな光景が浮かぶでしょうか。

 蝶は春の季語。なかでもその年に初めて見るものを初蝶と呼んで、春のよろこびや決意を込めて詠まれています。

 「一番に出てくるのはモンシロチョウ。今年はいつ会えるかと、蝶の仲間で情報も飛び交います」。日本鱗翅(りんし)学会の前会長で大阪府立大学名誉教授の八木孝司さんの楽しげな口ぶりに、こちらもわくわくしてきます。

 花から花への移り気な印象と反対に、それぞれの蝶は幼虫の餌となる植物を正確に見分けて卵を産みつけ、蜜を求めるのも好きな花なのだそう。「モンシロチョウが好むのは菜の花などアブラナ科、モンキチョウはマメ科でレンゲに集まる。美しく眺めている花と蝶の組み合わせは、生きるための必然なのです」と八木さん。「自然に感動し『なぜだろう』と心が動くことがサイエンスの始まり。日本文化に流れる『もののあはれ』を知ることと同じと考えます」

 教わったのが、4月初旬にだけ現れて「春の女神」とたたえらるギフチョウ。京都の小塩山(おしおやま)では、地域の人たちが里山の環境を再生し、カタクリの花とギフチョウを見守っています。晴れた風のない日だけの、出会いです。(編集委員・長沢美津子

3月のおかし

銘 蝶々 うるち米を特に細かくした上用粉を使う外郎(ういろう)生地は、米の香りが高い。焼き印で蝶の紋を付け、粒あんを包んでいる。

協力:今西善也 京都祇園町「鍵善良房」15代主人。

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