「空売り」誘い、買い手確保 売り手対策で株価操作か SMBC日興

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 SMBC日興証券が仲介した株取引で株価操作が行われたとされる事件で、値下がりを見越した「空売り」をしやすい仕組みで買い手となる投資家らを集める一方で、売り主のために自社資金で不当に買い支え、下落幅を抑えていた疑いがあることが分かった。東京地検特捜部は、買い手の確保と売り手の納得を同時にかなえるため、他社にはないビジネスモデルが構築されていたとみて調べている。

 金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で逮捕されたのはエクイティ本部の本部長ヒル・トレボー・アロン容疑者(51)=専務執行役員=、同本部のエクイティ部部長・山田誠容疑者(44)ら4人。東証1部上場の5銘柄について市場が閉まる直前に大量の買い注文を入れるなどし、終値を前日並みに安定させる操作をした疑いが持たれている。全員容疑を否認しているという。

 5銘柄は「ブロックオファー」と呼ばれる取引の対象だった。大株主から売却意向があった株を株式市場の外で買い取って投資家に売り出す取引で、同社は差益を得る。売買の価格は取引日として設定した日の市場の終値が基準となり、終値が低いと大株主が売却を撤回するリスクがある一方、高くなると投資家が十分つかず、同社が在庫を抱えるリスクがある。

 関係者によると、二つのリスクを同時に解消しようとしたのがSMBC日興のモデルだったという。

他社にはないビジネスモデルか

 同社が投資家に取引日を告知するのは、前日の市場が閉じた後だった。投資家らは翌日に市場が開くと空売りを実行。空売りは持っていない株式を借りて売却する行為で、大量に行われれば株価が下がる傾向がある。取引日が想定できる同社の取引では、空売りが起きやすかったという。

 一方、他の証券会社が投資家に告知するのは取引日の2~3日前で、いつの終値が基準になるかは知らせないことが多い。投資家は空売りを仕掛けて相場を動かすことが難しいという。

 市場関係者は「他社は株価下落による大株主の不満を懸念して空売りリスクを回避しているが、SMBC日興は買い手も多く集まるように空売りリスクが高い仕組みを自ら選んでいる」と指摘する。

 そのうえでSMBC日興は大株主対策として、空売りなどで株価が下落した局面で、自社の資金で対象銘柄を不当に買い支えていたとされる。前日の終値より少し低い価格を目標とし、ブロックオファー取引の営業部門と自己売買部門で情報共有していたという。

 捜査関係者は「投資家、大株主の双方に良い顔をする巧妙な手法で、違法な安定操作がそれを支えていた」と指摘した。一方、専務執行役員側の関係者は「大株主が取引をキャンセルすることはほぼない。買い注文は取引成立と関係なく、通常業務の範囲内の行為だ」と反論している。