高松塚壁画発見から半世紀 小さな古墳がもたらした謎の数々

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編集委員・中村俊介
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 高松塚の「飛鳥美人」――。そう聞けば歴史が好きな人、いや関心がない人だって、誰もがあの麗しい極彩色の女性群像を思い浮かべることでしょう。高松塚古墳奈良県明日香村)の国宝壁画が見つかって、50年を迎えます。世間を驚かせた日本考古学上の大発見を、時間を巻き戻して振り返ってみましょう。

 1972年3月27日の朝日新聞朝刊。1面トップを飾ったのは貴婦人たちの大きな写真でした。記事には「日本考古学界の戦後最大の発見」の文言が躍っています。女性群像だけではありません。青竜や白虎、玄武といった四方をつかさどる霊獣たち、東西で向き合う金銀の太陽と月、天井にきらめく星々。しっくい塗りのキャンバスには、はるか1300年前の幻想世界が満ちていました。

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 とはいえ、当時の新聞はモノクロが主流。そこで朝日新聞は2日後、「カラー特報」と銘打って画期的なカラー写真を掲載し、飛鳥の鮮やかな彩りを伝えました。おそらくこれが、読者のみなさんの脳裏に刻まれた彼女たちの、鮮烈なデビューとなりました。

 それにしても、直径たった20メートルほどの小さな円墳。このなかに、これほどの宝が眠っているとは誰が想像できたでしょうか。

竹林に覆われた墳丘 長く忘れられていた存在がなぜ

 なるほど古墳と言えば、20…

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