第40回核使用、通常なら考えられないが… 秋山信将・一橋大学教授に聞く

有料会員記事ウクライナ情勢

聞き手 編集委員・佐藤武嗣高久潤
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 ロシアによるウクライナ侵攻で、プーチン大統領が核の使用を公然とちらつかせています。またロシア軍はウクライナの欧州最大の原子力発電所を攻撃して制圧し、核を「人質にした」と大きな非難を引き起こしています。核戦争の脅威は高まっているとみるべきなのか。今、どのような議論が必要か。国際政治学・核軍縮が専門の秋山信将・一橋大学教授に聞きました。

あきやま・のぶまさ

1967年生まれ。専門は国際政治学、軍備管理、軍縮。核不拡散条約運用検討会議日本政府代表団アドバイザーなどを務めた。著書に「核不拡散をめぐる国際政治」、共著に「『核の忘却』の終わり 核兵器復権の時代」など。

 ――いま、核戦争に近いところにいるのでしょうか。

 プーチン大統領は核のエスカレーションについていくつかの段階を踏んできました。

 まずウクライナ国境に兵力を集めたときです。核弾頭も搭載可能な短距離弾道ミサイルや中距離巡航ミサイルなど、戦場で戦況を変えるために使われる、いわゆる戦術核が配備されました。次に2月19日、自らが指揮し、黒海艦隊などが参加した軍事演習。これは戦略核(相手国の存立を脅かす核)を含めた核戦争を想定したものでした。

 さらに、24日の開戦時には、核兵器の使用を示唆しています。そして27日には戦略核の運用部隊を特別態勢に置き、その翌日に戦闘態勢へ入るよう指示したと発表しました。

 開戦前、開戦、特別態勢、戦闘態勢という段階ですね。その中で特別態勢、戦闘態勢は戦略核に対するものでした。ただ、部隊を実際に動かしたかどうかと言うと、これは3月1日の演習をどう見るかによりますが、大きな変化はないという見方も有力です。

 であるならば、態勢の変化は、核兵器使用のための指揮命令系統ネットワークの接続(平時には接続されていない)などを意味しているのかもしれません。

 ――核戦争の脅威というと、1962年の米ソ間のキューバ危機がありました。

 キューバ危機の方が圧倒的に高いレベルの危機です。米国の偵察機がキューバ上空で撃墜されました。実際に両者の潜水艦がやり合い、ソ連側の潜水艦が核魚雷を発射するかという直前までいきました。本当に一触即発の状態にあって、最終的に回避されたのは、為政者の大きな自制と幸運の要素もあったと思います。

 これに対し今回は、米国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)ミニットマンⅢの発射実験を自粛するなど、核戦争のリスクを考えて抑制的態度をとり、ロシアに対して自分たちはエスカレートさせないのだとシグナルを送り続けてきました。ただ……。

「書かれたことを実際にやる」という怖さ

 ――何でしょうか。

 問題は、プーチン氏の頭の中…

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