「M字カーブ」平均より深い谷 「ものづくり」の愛知で何が…
ものづくりが盛んで、三大都市圏のひとつに数えられる愛知県。九州経済連合会が今年発表した国内のジェンダーギャップ(男女格差)指数では、愛知県を含む東海地方はワースト2位だった。背景に何があるのか。
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家事負担の偏り、非正規雇用の多さ――。コロナ禍で「女性の生きづらさ」が顕在化しています。国際女性デーに合わせ、問題の裏にある社会の問題と解決策を考えるイベントを開催します。
2月末、「イーブルなごや」(名古屋市中区)の会議室のホワイトボードには、何枚もの紙が張り出されていた。「成果主義の会社なので、働き続けられるか不安」「実家など周りに迷惑をかけてまで、自分が働き続けるべきなのか」。育休中だという男女10人の今の気持ちだった。
そんな「職場復帰準備セミナー」の様子を、伊藤遥さん(32)は後方から静かに見つめていた。参加者たちのやりとりから、不安な気持ちがひしひしと伝わる。いつの間にか、かつての自分に姿を重ねていた。
数年前、伊藤さんは同じ場所にいた。県内のメーカーに勤めていた26歳のとき、社内の男性と結婚し、27歳で出産。約1年半の育休を終え、職場復帰を間近に控えたころだった。
当時の職場には、結婚を経験した同期の女性はいなかった。友人たちの多くは、結婚や出産を経て専業主婦を選んだ。子育てをしながら、これまで通り仕事を完璧にこなせるだろうか。勤務先は育児に理解があると感じていたが、周囲には、気軽に相談できる相手がいなかった。
フルタイム勤務で夫と分担制に
その一方で、母親が働くことは当たり前だと思っていた。母子家庭で育ち、働く母親の背中を見て育ったからだ。自分も子育てをしながら働き、キャリアも重ねたい。職場復帰から2年後、キャリアコンサルタントへ転職した。
転職後はフルタイム勤務になり、仕事と家庭を両立させるための工夫がより必要になった。家事や育児は、夫と話し合いを繰り返し、完全に分担制に。家事をほとんどやったことのない夫のために、少しずつ伝えながらできることを増やしていった。息子(5)の保育園から急なお迎えの連絡が来ても、夫婦で予定を事前に共有することでカバーし合った。いまは、フルタイムで名古屋市内の高校でキャリア教育に関する授業の支援を行っている。
この日のセミナーに「先輩ゲスト」として参加した伊藤さんは、「全て今まで通りにこなそうと思わなくていいんです」と切り出した。仕事と家庭の両方を一人で完璧に行うことは難しい。「周りに協力をお願いしながら、仕事やキャリアなどやりたいことは我慢しないという『自愛』も大切にしてほしい」と結んだ。
女性労働力率の「M字カーブ」
女性の継続就労は、愛知県にとって重要な課題だ。
2021年公表の「あいち男女共同参画プラン2025」によると、県内の女性労働力率(元データは15年国勢調査)は、25~29歳と45~49歳を頂点とし、30~34歳を谷底とする「M字カーブ」の谷が、全国平均より深くなっている。
■「ものづくり」の現場は男性…

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