熱演でしのぶ後鳥羽上皇 来島800年、海士で島民劇

清水優志
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 後鳥羽上皇(1180~1239)の隠岐来島800年を記念した島民劇が6日夜、島根県海士町の隠岐神社で催された。戦乱に敗れ、失意のうちに島へと配流された上皇と、島の人びととの交流を描いた物語を島民らが熱演し、観客らは当時の様子に思いをはせた。

 「輪廻(りんね)転生があるとすれば、政(まつりごと)とは無縁の名も無い一漁師として一生を送ってみたい」

 雪もちらついたこの日、約2時間に及んだ舞台は、上皇が海のかなたに沈む夕日を眺めながら語る場面で締めくくられた。

 来島800年の記念行事の一つ、島民劇「海士のごとばんさん」は、上皇と島の関わりを考えてもらおうと有志が企画。脚本・演出を松江市の劇団「幻影舞台」主宰の清原眞(しん)さん(73)が担当した。

 後鳥羽上皇は、鎌倉幕府の執権・北条義時を追討しようと起こした「承久の乱」(1221年)に敗れ、隠岐諸島の中ノ島(海士町)へと送られた。19年後、都への帰還がかなわぬまま60歳でこの世を去ったが、島民からは今も「ごとばんさん」と慕われている。

 「無念のまま島で19年を過ごしたといわれるが、果たしてそうか」

 清原さんは、かつて小泉八雲を魅了し、今も全国から多くのIターン者を引きつけるこの島で、上皇も安らぎを覚えたのではないか、との着想から脚本を練り上げたという。

 現代と800年前を行き来しながら、島の人びとの触れあいで変化していく上皇の姿を描いた物語は、オーディションで選ばれた島民ら約40人が演じた。昨年10月の予定だった上演は新型コロナウイルスの影響で5カ月ほど延期になり、全体稽古もままならない中、時にはオンラインで準備を重ねてきた。

 本番では、上皇をまつる隠岐神社の拝殿に特設舞台が準備され、海士弁と京ことばを巡る漁師との掛け合いや牛突き、人形劇なども物語を彩った。

 首都圏からの「島留学」で隠岐島前高校に通う水野結子さん(2年)は、舞台回しとなる演劇部員の一人を演じた。「稽古を通じて島の色んな人と関われて、一生の思い出になりました」

 上皇を演じた歯科医師の田口耕さん(63)は松江市出身。約30年前にIターンで島に移り住んだ。「よそ者でも分け隔て無く受け入れる土壌は、当時から受け継がれているのではないか」と島の魅力を再認識できたという。

 当日の島民劇は、YouTube(https://youtu.be/qnLMJG3xA7E別ウインドウで開きます)で見ることができる。(清水優志)