「逃げたから今生きている」女川に戻った27歳歌人、紡ぎ始めた震災

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佐々波幸子
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 東日本大震災から11年が経つ。被災体験を前面に出すことをためらっていた歌人が震災をテーマにした本を刊行した。震災から地続きの暮らしのなかで、時を経たからこそ、表に出せる思いや生まれることばがある。

 「奇跡的に全壊でした」と答えたり全壊の上に流失ありて

 歌人の逢坂みずきさん(27)は昨年、震災で津波に襲われた宮城県女川町の自宅を詠んだ。

 歌は大学時代に詠み始め、震災のことも詠んできたが、2020年に出した第1歌集『虹を見つける達人』には収めなかった。「特別なつらい経験をした可哀想な人の歌」だとレッテルを貼られたくなかったからだ。

 写真部員だった高校時代、「写真甲子園」への出場や県の写真展での入選は被災者ゆえと感じていた。「震災のことで評価されたくない」という思いが残っていた。

 だが、震災10年を機に雑誌などで震災詠の特集が組まれ、「まとめて発表しておかないと、なかったことになってしまう」と焦りを感じた。今年1月、『まぶしい海―故郷と、わたしと、東日本大震災―』(本の森)を出版。震災詠に加え、11年1月から12月までの日記の抜粋なども載せた。

 震災に遭ったのは、石巻市内の高校から帰宅途中、女川駅に迎えに来てくれた父の車の中だった。避難先で通学かばんに入れていた日記帳に詳細な記録を書き始めたのは、発生から2時間も経たない3月11日午後4時。

 「みるみるうちに水がぬって(浸水して)、船だけの心配をしている場合ではなくなった」

 「あらゆる家を倉庫を鯨飲馬…

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