運動会も芸能祭も震災でなくなったけど 「安渡の母」は復活を夢見る

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編集委員・東野真和
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現場へ! 「生きた証」その後③

 「父の跡を継いで理容室を営んでいますが、今も学びたいことがたくさんあります」

 岩手県大槌町発行の東日本大震災犠牲者回顧録「生きた証(あかし)」で、亡き父八郎さん(当時72)についてこう語った佐藤加奈絵さん(52)は、父が生きていたら、がらりと変わってしまった地元の安渡(あんど)地区を見てどう言うだろうかと思う。

 理容室の壁には、八郎さんの遺影とともに、かつてのにぎやかな安渡の写真が並ぶ。今でいう地域コミュニティーの理想型だった。

 「町が一つの家族のよう。子どもを置いて働きに出ても、近所の人たちが見守ってくれるので安心だった」。地区運動会は異様な盛り上がりを見せ、応援合戦は仮装大会となり90歳近い女性がセーラー服姿で叫ぶ。芸能祭では地元有志の方言丸出しの劇団が、爆笑の渦に巻き込む。佐藤さんも名優の一人だった。

 震災で2千人近い人口の1割…

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