美の巨匠、なぜ男性ばかり? 研究者に聞いた

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聞き手・山本奈朱香
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 モネやマネ、黒田清輝など、巨匠と言われる画家は男性ばかりです。なぜなのでしょうか。日本女子大学学術研究員の吉良智子さん(近代日本美術史ジェンダー史、表象文化論)に聞きました。

「ミューズ」 ポジティブなイメージだけれど……

 ――美術史をたどると、男性は「見る主体」、女性は「見られる客体」という非対称性があるそうですね。

 ルネサンス以降定着した構造です。芸術を生み出すのは男性で、女性はそのモデル。「ミューズ(芸術をつかさどる女神)」という言葉にはポジティブなイメージを持っている人も多いかもしれませんが、ミューズは芸術を生み出す主体ではなく、男性の霊感源なのです。この非対称性は形を変えて現代でも続いていると思う。何げなく目にするポスターには、伝えたい内容とは関係なく若い女性が笑っている絵や写真を使われがちです。

 ――女性が創作する側になったのはいつからですか。

 昔から創作する女性はいました。ただ、出世はできない構造になっていた。西洋だと、絵画のジャンルには17世紀ごろ成立したヒエラルキーがありました。最高位は宗教画や神話画、歴史画。ただ、そのような絵を描けるようになるには男性ヌードデッサンの修業が必要でした。女性が男性ヌードモデルを見ることは「はしたない」とされていたので、女性は2番手以下の肖像画、静物画などを手がけるしかなかった。19世紀になると絵画ジャンルのヒエラルキーは影響力を失っていきます。フランスだと女性が官立の美術学校(エコール・デ・ボザール)を受験できるようになるのは1897年です。しかし女性は下着をつけた男性ヌードモデルをデッサンしていました。

アーティストを「若いお嬢さんです」

 ――日本では?

 基本的に男性の世界だけど抜け道がありました。近世における文人画家の趣味のサークルの中には画家の妻や娘が入れた。葛飾北斎の娘の応為は、父親の手伝いとして絵画の修業を積むことができ、作品が残っています。

 ところが近代になると西洋のシステムやジェンダー観が入ってきて、男性は立身出世、女性は専業主婦という近代家族ができあがっていく。良妻賢母になるためには教養が必要だということで女学校がたくさん出来ました。でも官立の東京美術学校(現在の東京芸術大学)は男子校で、女性は入れなかった。

 私立女子美術学校(現在の女…

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