「反論満載のうそ本」町長の発言きっかけ、町図書館で閲覧不可に

編集委員・伊藤智章、戸村登
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 産廃処分場建設をめぐり全国初の住民投票を行った岐阜県御嵩町の町図書館で、町政について書かれた1冊の本が閲覧できない状態になっている。閲覧不可の対応は、「反論満載のうそ本」とする渡辺公夫町長の発言がきっかけ。9日の町議会で「町長による検閲に当たる」との質問を受けた渡辺町長は、「つくり話やうそが多すぎる」と答弁した。

 この本は元朝日新聞記者のライター杉本裕明さん執筆の「テロと産廃 御嵩町騒動の顚末(てんまつ)とその波紋」(花伝社、2021年2月発行)。1996年の町長(当時)襲撃事件の後、翌年の住民投票で処分場計画は頓挫させたものの、大半の住民が離れた元予定地が荒れ地となっているとし、2007年の渡辺町長就任後も、職員2人が自殺するなどの問題が起きていると書かれている。

 渡辺町長は出版直後の昨年3月、町議会で「反論満載のうそ本」「あんなでたらめを(図書館に)置くわけにはいかん」と発言。町図書館は著者贈呈本を倉庫に入れ、これまで4件あった閲覧リクエストにも応じなかった。

 9日の町議会の質問に対して、検閲だとの指摘には答えず、自身が町議時代から町長の座を狙っていたとされた点や、職員自殺の経緯についての記述などが違っていると答弁した。

 同町図書館には「図書館はすべての検閲に反対する」などとする「図書館の自由に関する宣言」が掲示されている。

 日本図書館協会の西河内靖泰・図書館の自由委員会委員長は、「地域についての本は、一級資料として一番に入れるべきだ。事実誤認があるなら、反論の小冊子を付ければいい。賛否があっても情報を提供するのが図書館の使命だ。貸し出ししても内容に同調していることにはならない。民主主義を守ったはずの町がどうしたのか」と話している。(編集委員・伊藤智章、戸村登)