原発処理水放出、「容認できる」「できない」両方を選んだ町長の思い
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、東北電力女川原発を抱える宮城県女川町の須田善明町長(49)は「現実的手法として海洋放出は理解できるが、その以前にやるべきことがある」との考えを示した。朝日新聞の岩手、宮城、福島、茨城の市町村長アンケートに回答した。
須田町長は海洋放出への考えを聞く設問で、「容認できる」と「容認できない」の相反する選択肢の両方を選んだ上で、原発立地町長としての考えを述べた。主な内容は以下のとおり。
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【政府・東電への提言】
私は「現実的手法として海洋放出は理解できるが、その以前にやるべきことがある」という考え方だ。
風評対策においては、損失額を補償する形式では漁業者救済にとどまってしまい、根本である風評への対策にはつながりにくいと考えてきた。もっとも大事なことは、福島県産の水産物が安全であることの客観的・社会的証明、すなわち検査済みの安全な水産物が流通して国民の口に入ることである。そうであってこそ、風評は払拭(ふっしょく)される。
そのためには(政府の決めた)基金による支援ではなく、政府・東電が卸売会社を設立し、標準以上の相場で買い取り、自ら販売促進し、国民に受け入れられる取り組みをしていくことだ。理解が進めばブランドも強化されるし、利益は福島に還元される。最終的には地元に会社とノウハウごと移転すればいい。そのような取り組みが望ましいのではないか。
【処理水の安全性】
これまでも世界中の原発からは極めてごく微量のトリチウムを含んだ水が放出されてきたが、当然風評被害も発生していない。
これだけ懸念が示されているのは、福島第一原発由来という点や意図的に「危険である」とすり込む勢力の存在、東電への信頼感不足、安全性に対する科学的知見への理解醸成不足が大きな要素だ。被災地を政争や政治の道具にしてはならない。
処理水の安全性については、各メディアの扱い方に濃淡がある。トリチウム以外の放射性核種がほぼ除去されていれば、処理水を想定通り希釈した場合、健康リスクは無視できるレベルというのが科学的見解だ。
【風評の払拭に向けて】
風評被害が懸念される負のイ…
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