白いロマンスカー、撮れた「奇跡の1枚」 ツイッターを通じた出会い

金沢ひかり
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 【神奈川】小田急線ロマンスカーを撮影しようとシャッターを切ったつもりが、展望席から満面の笑みで手を振るグループが撮れてしまった――。奇跡の一枚を被写体に届けるべく、撮影者がツイッターで人探しを始めると、多くの反響が寄せられた。被写体となったVSE(50000形)は11日、最後の定期運行を迎える。

 シルキーホワイトの優美な車体で県内を駆け抜けてきたVSEは、2005年にデビュー。コロナ禍で特急の運行本数が減り、定期運行終了が決まった。イベントなどで臨時運行し、来年には引退する見込みだ。

 県内に住む大島篤さん(47)は先月初め、そのVSEを狙って、沿線から望遠レンズで撮影。自宅に戻り写真をパソコンで拡大して見てみると、先頭の展望席で満面の笑みで手を振る人たちが写っていた。「撮影しているときは車体が画角に納まるようにすることばかり気にしていたのですが、拡大してみて『なんじゃこりゃ』とびっくりしました」

 あまりに楽しそうな姿に「見ているこっちまでうれしくなった」と大島さん。個人が特定されないよう目元を隠し、「日曜日に撮ったVSEの展望席にいた家族(かな?)がめちゃくちゃ楽しそうにアピールしてきてすげぇ良かったから本人たちにこの画像を届けたい」という文言と共にツイッターに投稿した。

「どうせ届かないだろう」と思っていたが

 投稿には「届いてほしい」「素晴らしい写真」といった反応がついた。約一日後、見知らぬアカウントからメッセージが届いた。

 写っていた1人、鈴木貴登さん(28)からだった。

 鈴木さんと2歳、4歳の息子たちは大の電車好き。VSEの定期運行が終わる前になんとかして乗りたいと考え、人気の展望席の切符を手に入れ、家族と友人の7人で乗り込んだ。

 沿線の撮影ポイントでは鈴木さんの同僚が待ち構えていた。同僚の姿をみつけた鈴木さんたちはカメラに向かって思いっきり手を振り、笑顔を向けた。その様子を偶然撮ったのが大島さんだった。

 後日、ツイッターで「VSE」と検索して大島さんのツイートを発見、驚いた。写真に写っているのは自分たちだと名乗り、「貴重なVSEの写真の邪魔をしてしまい大変申し訳ございません」という一文を添えたメッセージを送った。

 一方の大島さん。写真を投稿したものの「どうせ届かないだろう」と思っていた。鈴木さんから連絡が来て、「本当に届いたの?」と驚いた。何度かのメッセージのやりとりを経て本人たちと確信し、加工を外した写真をプレゼントした。鈴木さんは「電車そのものを撮りたい人の邪魔になってしまっていないかと心配でしたが、あたたかい意味でとらえてもらえて、うれしかった」と話す。

 ツイッターを通じた出会いはネット上でも話題になった。小田急電鉄の広報は「ロマンスカーのご乗車をお楽しみいただけたことや、お客さま同士のやり取りを通じて、多くの方に関心を寄せていただいたことについて、うれしく思います」とコメントしている。

 大島さんと鈴木さんは「やりとりを通じて会ってみたくなった」という。VSEが定期運行を終える11日に初めて対面する予定だ。(金沢ひかり)

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