太宰の「斜陽」映画化、ロケの舞台に山梨 地元出身俳優ら作品支える

三ツ木勝巳
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 山梨で一時期を過ごした作家太宰治の代表作の一つ「斜陽」の執筆75周年を記念した映画「鳩のごとく蛇のごとく 斜陽」の撮影が県内で続いている。主な出演陣が顔をそろえた記者会見が8日、ロケ地の山梨県山梨市正徳寺の根津記念館であった。主役を演じる俳優の宮本茉由さんは「素敵な皆さんと一緒に100年も200年も残るような作品にしていけたら」と、映画化への思いを語った。

 「斜陽」は1947年に出版された。終戦直後、衰退のなかにありながら、再出発を願う元貴族の女主人公。「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」という、道ならぬ恋に突き進む主人公の言葉が知られている。“斜陽族”の流行語も生んだ。

 今回は、近藤明男監督がメガホンをとる。山梨県出身の故人で映画監督の増村保造氏と、脚本家の白坂依志夫氏が残した草稿を元に、近藤監督が仕上げた脚本を使う。増村氏の助監督も務めていた近藤監督は「四十数年前、私が助監督につくはずでしたが、実現できなかった。私にはそのリベンジ。増村さん、白坂さんの本(脚本)を少しでも悪くしないよう頑張ります」とあいさつした。

 根津記念館は、映画のメインの舞台になるという。主演の宮本さんは「何十年も愛されている作品の映画化の主演をさせていただくということで、とても身が引き締まる思いです」と撮影に臨む思いを語った。

 太宰と山梨との縁は深い。最初の妻との離婚後、荒れた生活を立て直すために1938(昭和13)年、井伏鱒二のすすめで山梨を訪れた。現在の富士河口湖町天下茶屋では、「富嶽百景」を執筆した。1年ほどの居住期間だったが、結婚して甲府に住むなどして、創作の勢いを取り戻した地でもある。

 貴婦人の誇りを持ちながら病に侵される主人公の母を演じる水野真紀さんは山梨の印象について「ボロボロだった太宰をいやした地という印象が強いです。セリフにもありましたけど、空気が本当においしいところだと改めて感じました」と述べた。

 地元出身の俳優陣らも撮影を支える。老医師を演じる菅田俊さんは「郡内出身なので若いときに峠の茶屋へよく行っていました。どんな役でもと監督に無理やり入れていただきました」と話す。巡査部長役の柏原収史さん、作家の妻を演じる白須慶子さんも県内出身だ。

 近藤監督は「最初は斜陽といえば青森と思い、映画の舞台はあと伊豆と二つしか頭になかった。それがやればやるほど山梨に引きつけられた。実際、一番のメインとなるセットとしてここをお借りしました」と話す。10月に山梨で先行ロードショーの予定だ。

 撮影は3月1日にスタートした。県内での撮影は11日まで。その後、青森や東京、埼玉などでの撮影が控え、3月いっぱい続く。(三ツ木勝巳)