福島復興支える木村さん、ウクライナ人支援へ動く 「核の脅威」懸念

ウクライナ情勢

亀岡龍太
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 ロシアの軍事侵攻で「核の脅威」が深刻化するウクライナ情勢。木村真三・独協医科大学准教授(54)は東京電力福島第一原発事故の被災者を支援しながら、チェルノブイリ原発事故(1986年)の調査でウクライナの人たちとも親交がある。先行きを憂慮し、ウクライナの人たちの受け入れ準備を始めている。

 木村さんは愛媛県鬼北町生まれの放射線衛生学者。東日本大震災直後に福島県放射能汚染の実態を調べ、その後、独協医科大学が二本松市に設けた国際疫学研究室福島分室の室長に就いた。被災者の目線で、農地の放射線量の測定や表土を削り取る作業などを農家に指導してきた。

 一方、ウクライナには2000年から計約70回訪れた。チェルノブイリ原発周辺でも、住民の健康や生活状況などの調査を続ける。「福島で何が起きているかを知ることが、チェルノブイリ被災地の支援につながるし、チェルノブイリでの知見も福島で活用できる」と話す。

 ロシアの軍事侵攻前から兆しを感じていた木村さんは、ウクライナの研究者らとスマートフォンやSNSなどで連絡を取ってきた。2月20日ごろには「家庭で銃や銃弾を確保している。街では売り切れた」と知人が知らせてきた。首都キエフの知人らは、侵攻が始まった24日の前後から地下シェルターに避難。24日には「ミサイルが飛来している。断続的に爆撃音がする」と伝えてきた。

 弟のように思い、実家に招いたことがある40代の男性研究者は、14年にロシアがクリミア半島を占領した際にウクライナ軍のロケット弾担当将校だったが、現在は予備役。だがウクライナは現在、18~60歳の男性は予備役でも招集されるという。「命を大切にしなさい。戦争することが良いとは思わない」と伝え、ロシアの侵攻後も「家族と日本に来い」と促した。「愛国心のある男。家族と離れ、今は銃を取って戦っているのでは」と身を案じる。

 木村さんは侵攻前、ロシア軍はウクライナ東部への部分的な攻撃にとどまるとみていた。「まさか北部や南部でも進軍してくるとは思わなかった」。ロシア軍はその後、チェルノブイリ原発や欧州最大級のザポリージャ原発も掌握。「ザポリージャは6基中1基が実際に動いている。国際法上も国家による攻撃など想定されていなかった。運転への影響はないと思うが、ロシアは核で汚れる状況を作れると本気で脅している」

 木村さんは今後、ウクライナの人たちを難民として国内でも受け入れる必要が出てくると考えている。このため、その滞在先を福島で確保する準備を、急きょ始めた。通訳や衣食住、医療面での支援と合わせ、米国やカナダなど他国への中継ぎとしての短期滞在だけでなく、長期滞在も視野に入れ、数十世帯が暮らせる施設などの確保を目指す。「今月中にも対応したいが、今は資金を確保する段階」という。

 3・11から11日で11年。福島では福島第一原発の周辺も徐々に立ち入れるようになっているが、山林など大半はまだ「帰還困難区域」のままだ。一方で、チェルノブイリ調査の継続は不透明感を増す。

 「これ以上犠牲を出してほしくない。出国せざるを得なかったウクライナの人たちのため、できることから支援をしていきたい」(亀岡龍太)