ロシアの巨匠プレトニョフ「わが祖国」 記者が感じとったメッセージ
編集委員・吉田純子
ロシアの巨匠ミハイル・プレトニョフが東京で、スメタナの交響詩「わが祖国」を振った。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。本来は2020年3月に演奏される予定だったが、コロナ禍で3度の延期を経て、故国ロシアが開戦の火ぶたを切った直後という困難なタイミングでの来日となった(10日、東京・赤坂のサントリーホール)。
指揮台に立つやいなや、すぐにタクトを泳がせ、聴衆を物語の世界へと一気に招き入れた。夢から醒(さ)まさせないようにということか、曲と曲の間もあまり置かない。川辺の石を拾ったり、水を掬(すく)ったりするくらいの何げなさで、訥々(とつとつ)と音符を空間に置いてゆく。
しかし、結果として眼前に現…