B型肝炎訴訟、起算点は「発症時」 札幌地裁、請求棄却
集団予防接種が原因のB型肝炎を20年以上前に発症した北海道内の男性2人が、国に損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、札幌地裁であった。広瀬孝裁判長は原告の請求を棄却し、「現在の法制度や過去の最高裁判決を考慮すると、このような判断をせざるを得ない」と述べた。
原告は、札幌市と日高地方に住むいずれも70代の男性。2012年の提訴時点で発症から20年以上が経過しており、損害賠償の請求権のある除斥期間(20年)の起算点が争われた。
原告側は発症後、しばらく経ってから症状が悪化したため、「治療を受けるなど新たな損害が生じた」と指摘。症状の悪化は現代医学では予想できず、起算点は「症状悪化が判明した時点」だと主張した。これに対し、被告側は「発症時」が起算点だとした。
B型肝炎をめぐる訴訟では最高裁第二小法廷が昨年4月、再発した福岡県の原告2人について、起算点を「再発時」と認定。2人が再発したB型肝炎は発症時より悪質で特異なもので、再発のメカニズムも医学的に解明できず、「質的に異なる新たな損害」が再発によって生じたと判断した。
11日の札幌地裁判決は、最高裁判決の示す「異なる損害」が、原告らの症状悪化によって生じたかを検討した。医師の意見書をもとに、B型肝炎はそもそも悪化の可能性が医学的に認められると判断。原告らについては「同じ病態による症状が生じ続けているに過ぎず、異なる損害が生じたとは言えない」として、起算点を「発症時」と結論づけた。
今回の判決は最高裁判決後、全国の同種訴訟で初めての司法判断だった。原告側弁護団によると、除斥期間の起算点を争っている全国の原告約170人のうち、約50人は最高裁のケースと事情が異なるという。(平岡春人)
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