ウクライナのゼレンスキー大統領は頻繁にソーシャルメディアに動画を投稿してメッセージを発しています。現地の戦況や被害状況もSNSにアップされ、世界中に発信されています。「LikeWar」(邦題・「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア、NHK出版)の共著者P・W・シンガー氏に聞きました。
――現在のソーシャルメディア上でウクライナとロシアはどちらが優位だと思いますか。
ウクライナはネット上の情報戦に勝利しました。「勝っている」のではなく、勝利したのです。ロシア、特にプーチン大統領はもうこの物語を書き換える方法がありません。
彼が望んでいたのは迅速かつ簡単に勝利し、ウクライナや世界にとって既成事実とすることでした。そのためには、ウクライナ国内の緊急事態に対応するロシア軍が邪悪な政権に対抗してウクライナ人を救いに来たという姿を描くこと、さらに、それを迅速かつ圧倒的に成し遂げること、その二つがロシアにとって必要でした。その両方が崩壊したのです。
すぐに終わる軍事作戦に対しては、ウクライナの人々も他の国々も、たいした反応を示せないだろうと、彼は期待していたのです。しかし、それは明らかに実現せず、もう戻ることはできないのです。
ネットでの心理戦、ウクライナ軍の士気も向上
一方、ウクライナのシナリオは、自身を「被害者であり、同時に英雄である」として描き、「あなたたちは助けるべきだ」という状況になることです。日本政府は数年前なら考えられないような援助を約束しました。スイスとスウェーデンがウクライナへの支援に加わっています。ヒトラーに対する制裁措置さえ実施しなかった国々です。
――ロシアは情報戦で負けたと…
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- 【視点】
ウクライナ危機は軍事力で劣る存在がSNSを活用することでいかに強国に対抗しうるかの可能性のみならず限界も示している。その限界を理解することも重要ではないだろうか。 確かにSNSを通じた情報やイメージの戦争で、ウクライナは圧倒的な勝利を
- 【視点】
戦争や災害は、それを報じるメディアの取材手法やニュースのあり方にも影響を与えてきた。 私の経営するJX通信社も、報道ベンチャーとしてSNS上の災害、事故、事件などの投稿をAIで収集・解析するサービスを、朝日新聞を含む国内の大半の報道機