「絵画のような芸術作品を」内村航平、体操個人総合6種目ラスト披露

松本麻美
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 体操男子個人総合で五輪連覇、世界選手権6連覇を果たした内村航平が12日、東京体育館で引退イベント「KOHEI UCHIMURA THE FINAL」を開き、選手として最後の個人総合6種目を披露した。頭から足の指先まで神経を行き渡らせ、常に意識してきた「美しい体操」を披露し、約6500人の観客を魅了した。

 「絵画や音楽のようにひとつの芸術作品を見ているかのように錯覚できる演技が、美しい体操なのではと思う」と語っていた内村。イベントは競技会と違って採点はなく、スポットライトや音楽による演出があり、客席も器具から2メートルほどのところに設置するなど、臨場感やエンターテインメント性を持たせた。

 全盛期に比べ技の難度は落としたものの、2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪で個人総合を2連覇した「キング」としての意地ものぞかせ、最終種目の鉄棒ではH難度の手放し技ブレトシュナイダーに挑戦。うまく車輪につなげられず、代名詞の最後の着地もやや乱れたが、「だからファイナルなんです」と笑いを誘った。

 引退後の展望について、「僕としては終わりというより新たな一歩。体操の普及と、より深い技術の向上、伝統の継承をやっていきたい」と話した。松本麻美

引退に花添えた豪華メンバー

 リオデジャネイロ五輪で金メダル、東京五輪で銀メダルを獲得した団体メンバーの豪華な9人が、内村の引退イベントに花を添えた。

 昨年6月に引退し、現在は日体大コーチを務める白井健三さんは、自身の名「シライ」がつく技を床で三つ、跳馬で一つ披露。現役顔負けの大技を連発して会場を盛り上げた。「(内村)航平さんからの依頼じゃなきゃ絶対にあきらめていた」と笑った。

 内村が「新たな体操の魅力作りのきっかけになれば」とこだわった演出は、若手選手にも刺激を与えた。

 萱(かや)和磨(セントラルスポーツ)は「世界大会では派手な演出がある。選手としてやる気が出るし、国内大会でもやっていければ」。東京五輪個人総合金メダルの橋本大輝(順大)は、「今まで『する』だけのスポーツだったが、『見る、支える』があれば、盛り上がる大会になる。これからは三つの視点で競技を広げていければいいなと思う」と話した。

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