噴火で被害の浦村で連携から誕生「落ちないカキ」にクッキー

大滝哲彰
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 南太平洋のトンガ諸島で1月に起きた海底火山噴火による潮位の上昇。三重県鳥羽市浦村町では、多数の養殖いかだが壊れ、カキが海中に落ちる被害に見舞われた。しかし直後にアイデア商品が誕生するなど様々な取り組みがみられた。

 鳥羽駅から車で20分ほどの浦村町。潮位上昇の影響で、沿岸部に津波注意報が出されたのは1月16日未明だった。県や市によると、市内で60センチの津波を観測。カキ養殖のいかだ約500台が流され、少なくとも百数十台は曲がったり、丸太が折れたりしたという。

 すぐに動いたのは、カキ養殖業を営む「孝志丸水産」代表の浅尾大輔さん(42)。「浦村からカキがなくなったわけではない」。「カキ小屋」など今が旬のカキの営業に悪影響を与えないよう考えた。そこで受験シーズンに合わせ、海底に落ちずにロープに引っかかっていたカキを「落ちないカキ」として発売しようと考案した。浅尾さんの考えを知った同県桑名市の知人がSNSで「落ちないカキ」の販売について発信。すると問い合わせが相次いだ。

 発泡スチロールの箱に詰めた「落ちないカキ」(約50個入りで5千円)。マスコミでも報じられ、浅尾さんのもとに続々と買い求める人が訪れたという。

 ●クッキーに「作品」も

 桑名市のクッキー専門店「kurimaro collection」の店主、栗田こずえさん(38)は、カキを模した「落ちないカキ」のクッキーを作った。

 これまでに450種類以上の「いきものクッキー」を生み出してきた。浅尾さんから送ってもらった浦村町のカキ小屋マップを添えて、1月末から数量限定(1個540円)で販売を始めると、すぐに売り切れたという。

 浦村町では、いかだ本体だけでなく、カキをつるす樹脂製のロープが海中で絡まり、廃棄せざるを得ない状況にもなっていた。

 そこに海洋プラスチックごみを資源化させ、アート作品に加工している間瀬雅介さん(28)=鳥羽市=が目を付けた。間瀬さんはこれまで、海岸に漂着するペットボトルや漁具などのプラごみを、ボールペンや腕時計、サイドテーブルといった「価値あるもの」に生まれ変わらせてきた。今回もロープや廃棄予定のアンカーを引き取った。「海洋プラごみは漁具が多い。これらも資源として今後、作品に再利用します」と間瀬さん。

 期せずして自然災害の直後にわき起こった試みと連携。かかわった関係者たちは「いま自分にできることを考えただけです」と口をそろえた。地元のウェブメディア「OTONAMIE」のライター、福田ミキさん(40)は、浦村町での一連の動きを取材し、こう解説している。「関係性の中で起こった連携は、(それぞれの)強みを生かし、大切にしている思いを理解し合っていたからこそ柔軟で、なにより愛があった」(大滝哲彰)