ウクライナで米国が支援する「生物兵器」開発が進んでいる――。ロシア政府が繰り返す主張に対し、欧米は「プロパガンダだ」と明確に否定しています。ウクライナにある研究所では実際には何が行われてきたのか。米国防総省高官として生物・化学兵器対策に携わってきたクリスティン・パーセモア氏に聞きました。(ワシントン=高野遼)
Christine Parthemore 米シンクタンク「戦略リスク協議会(CSR)」の最高経営責任者(CEO)。ジョンズ・ホプキンス大学非常勤教授(グローバル安全保障)。2011~15年には米国防次官補上席補佐官として、化学兵器の廃絶や生物兵器への安全保障などに取り組んだ。
――「米国が支援してウクライナで生物兵器を研究している」というロシアの主張にどう反論しますか。
明らかな虚偽です。生物兵器の研究はまったく行われておらず、米国が協力しているのは防御と公衆衛生を目的にした取り組みです。
――米国がウクライナの研究施設を支援しているのは事実なのですね。
それは事実です。もともと、ソ連崩壊時に独立したカザフスタンやウクライナなどに残された核兵器やミサイルを破壊し、二度と使われないようにする取り組みでした。当時、これらの国は経済的に恵まれていなかったので、米国が「共同脅威削減(CTR)プログラム」として費用を支援してきたのです。
のちに生物・化学兵器の破壊にも取り組みました。例えば、カザフスタンのステプノゴルスクには、巨大な炭疽(たんそ)菌工場がありました。その量は膨大で、戦時中に動員すれば、地球上の全人類を殺せるほどの炭疽菌を生産することができた。こうした施設を破壊し、関わっていた科学者がほかの場所でリスクを拡散しないように雇用する取り組みを進めてきたのです。
――生物兵器も存在していたのですか。
米国や国際社会は、ソ連が何…

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