市川市長選20日告示 千葉の「玄関口」 東京より安い家賃魅力

佐々木健
[PR]

 人口49万人の市川市。都心につながる鉄道網などが充実する一方、急激な宅地化で道路網や公共施設の整備など街づくりが追いつかない現状もある。20日告示、27日投開票の市川市長選を前に、同市に来る人、住む人、出た人に市の魅力や課題を聞いた。

 JR小岩駅(東京都江戸川区)から下りの電車で都県境の江戸川を越え、乗車時間わずか3分ほど。到着したJR市川駅は南側にツインの高層マンションが立ち、駅周辺には飲食店やスーパーが並ぶ。快速電車も止まり、都心まで20~30分と、交通の利便性が人気のエリアだ。

 茨城県北部に住む松田蓮さん(18)は、4月から東京・飯田橋の大学に進学する。学生生活の拠点となる住居を市川駅周辺に決めた。築10年、約25平方メートルの1Kのアパートの家賃は、管理費合め月6万円。駅徒歩約15分と少し距離はあるが、同じ沿線の似た都内物件に比べ市川の家賃は3割超低かった。

 「東京での生活に憧れたが、家賃が安い分、アルバイトなどのお金はほかに使えると考えた」。通学時間は約40分。周囲の環境も含め、母親も「ここなら」と賛成した。「これ以上、千葉の奥には入りたくなかった。市の行政サービスなどは全く気にしなかった」。唯一の不安は、大学でできた友人が千葉県まで遊びに来てくれるかどうか、だ。

    ◇

 市内の東西の交通網に比べ、南北の道路網は脆弱(ぜいじゃく)で慢性的な渋滞が続く。

 東京から見たら安いが、県内でみれば高い――。再開発に向けた用地の取得費用はかさみ、都市計画道路や街の再開発などの進捗(しんちょく)にも影響があると、市がこれまでに策定した都市計画でも触れている。

 南北格差は行政サービスにも現れている。とりわけ江戸川から分水して市内を流れる真間川から北の地区は、里山が残る自然がある一方で、図書館やコミュニティーバス、公園や公共施設の古さなど、南側に比べ見劣りする。

 娘の中学進学を機に都内から夫の実家のある市川市北部に移り住んで14年になる会社員の女性(48)は、自然と都会が共存するところが気に入っているという。近所付き合いには特段の不満はないが、道路事情と公共施設の古さに対する不満は今も解消されない。

 「狭い道路と高架化していない踏切で南北の往来が分断され、バスは渋滞で時間が読めない。おのずと自転車の利用が多くなるが、駅周辺はどこも自転車でいっぱいだ」。自宅近くにある公民館は古く、中に図書館が併設されているが、「とても図書館とは呼べないレベル」といい、行徳や八幡との格差を実感する。「いつになったら新しくなるのかなと待ち続けて10年が過ぎた」

 6年前、結婚を機に市川市から東京都江東区に移り住んだ会社員岸ありささん(31)は、出産、育児休暇を終えた昨年、息子の保育園探しに奔走した。「待機児童問題」に加えコロナ禍が重なり、この4月にようやく入園先が決まった。それまで在宅勤務が増えたことでなんとかしのいだが、精神的にも肉体的にも限界が近づいていた。

 地元・市川に住む同窓生も子育て世代。LINEを使って子育て情報を共有しているが、その友達は昨春に保育園がすぐに決まったという。「市川市は待機児童ゼロとなったと聞いて、驚いた」。LINEには「ここ何年かでやたらと保育施設ができたんだよね」と書いてあった。市川について「ふるさと感もなく、市役所も何もしないところだと思っていた」と岸さんは話す。

 市によると、2019~21年度で認可保育園など保育施設は42施設が新たにでき、昨年4月に待機児童ゼロを実現した。子どもを持つなどライフスタイルの変化で行政への期待度も変わる。

 「生活環境に合わせてその時々の行政サービスの『いいとこ取り』で居住地を決めてもいいのではないか。それに納得した時に永住地になると思う」(佐々木健)