反対多い「安楽死」に悩む動物園 ライオン「ナイル」が問うた死生観

矢田文
[PR]

 高齢動物への安楽死についての考えを京都市動物園が来園者に調査し、論文にまとめた。調査では、自然死を重んじる意見が多く見られた。動物のためにも、時には考えなければいけない安楽死という選択。来園者にどう理解してもらうか、動物園も悩んでいる。

 調査のきっかけは、同園で長年愛されてきた高齢ライオン「ナイル」の死だった。飼育動物は技術の向上によって、自然界の寿命を大きく上回ることが珍しくなくなっている。生活の質(QOL)の低下など、状況によっては安楽死を検討するべき場合もある。

 ナイルは終生飼育されたが、安楽死について来園者はどう思っているのか。園は、高齢動物に対する死生観について、来園者にアンケートを実施。ナイルが死んだ翌月2020年2~4月に行い、220人から回答を得た。

 論文によると、ナイルに安楽死を行わなかったことについては「賛成」の立場が最多で、全体の82・6%だった。「場合による」が13・8%、「わからない」が3・2%で、「反対」は0・5%だった。

 自由記述欄には「安楽死をさせずに最後まで見せてくれたことに感謝」などの書き込みが多く、最後まで動物の一生を全うさせようという意見が大勢を占めた。

 一般的な動物・人への安楽死に対する評価も尋ねた。18・2%が「動物・人どちらの安楽死も賛成」、14・1%が「どちらも反対」、6・8%が「人の安楽死のみ賛成」、2・3%が「動物の安楽死のみ賛成」だった。半数近くが「場合による」と回答していた。来園頻度が多い人ほど、安楽死に対して反対する傾向があることもわかった。

 論文をまとめた飼育員の岡部光太さん(35)によると、日本は動物愛護の精神が強く、海外に比べて安楽死に対する抵抗が強い傾向があるという。高齢になったナイルの展示を続けていた際に、海外の来園者からは「衰えている状態で飼育することは残酷」「なぜ安楽死をさせないのか」という投書や指摘があった。

 ただ、動物に対する死生観について、来園者に統一的な見方を求めることは難しい。それゆえに考え方の違いが生じたときに、互いの理解を深めるための努力が必要になってくるという。岡部さんは「情報発信をどこまでするか、安楽死とどう向き合っていくかしっかり考えていかないといけない」と話す。(矢田文)